「整形外科を受診したら、肩の筋肉が切れているといわれたので、整形外科の指導を受けながらリハビリを受けようと思います」とお電話を頂戴しました。
思わず、「ああ、腱板断裂だったんですね。整形外科の指示通り、整形外科の治療を受けて下さい」とお答えしました。
肩が痛くて上がらないということで、ご来院いただいたのですが、
なかなか上手くいかず、
「もう一度、整体のチャンスをください。それで、ダメなら、私の技術ではできませんから、他を受診してみて下さい」と伝え、その時は整体の施術料を頂戴せず、お帰り頂きました。
その後、整形外科を受診したところ、「腱板断裂」との診断を受け、先のような、お電話をしてくれました。
ありがたいことです。
この方、左の肩を動かすと、肩に痛みが走るということでした。
肩関節を外転(横上げ)と屈曲(前上げ)しますと、初動時ですでに肩に痛みが出ます。
痛みがでないポジションを探っていきますと、上腕を外旋位にしますと、肩に痛みが出現せずに、挙上することができます。
また、自力で上腕を上げると肩に痛みが出るわけですが、その上腕を支えてあげる、介助してあげると、肩に痛みがでないことがわかりました。
このことから、肩関節が内旋位に変位して、「亜脱臼」を起こしているに違いない、というのが私の見解でした。
そこで、「亜脱臼」を整復するように、もてる技術を駆使したのですが、なかなか上手くいきませんでした。
そのため、「もう一度、整体のチャンスをください。それで、ダメなら、私の技術ではできませんから、他を受診してみて下さい」と伝えたのでした。
亜脱臼の整復技術をもう一度、確認し、再チャレンジする心づもりでした。
それで、ダメならしかたない、と。
ところが、整形外科の診断は「腱板断裂」です。
これでは、仕方がありません。
私の力の及ぶところではありません。
整形外科におまかせするほかはありません。
鍼灸学校時代の教科書を取り出してみます。
この本によると、
「腱板炎や肩峰下滑液包炎と腱板断裂とは、臨床症状が類似し、また病態もしばしば重なり合うので、その鑑別は必ずしも容易ではない」とあります。
さらに、
「自動的な挙上障害があっても、他動的に運動制限が認められない症例では、まず腱板断裂を疑わなければならない」。
なるほど、この点の判断が不十分だったということです。
自分の力で腕を上げようとすると、腱板が断裂しているため、痛みがでるが、他動的に介助してあげると、肩の筋肉の負担が減少するため運動制限がおきなくなる、ということです。
この方、MRIの検査を受けて、腱板断裂という診断を受けたわけですが、
この方のおかげで、腱板断裂の動診での手ごたえというものを教えていただけることとなりました。
ありがたいことでした。
それでは、このような腱板断裂(損傷)にたいして、「はり師・きゅう師」・整体屋が何ができるか?
と自問自答した場合、やはり、結論は、整形外科にお任せするほかはない、ということになります。