腕が後ろに回せない
四十肩・五十肩の症状を訴える方は、腕が上がらない、
前から上げたり(肩関節の屈曲)
横から上げたり(肩関節の外転)
このような動作ができないことを訴える方が多いものです。
それに付随して、腕を後ろに回すことができない動作(結帯動作)がついてきます。
けれどもやはりこの四十肩・五十肩も個人差があって、ひとそれぞれの症状をみせます。
この方は、なんと、前から上げたり(肩関節の屈曲)、横から上げたり(肩関節の外転)の動作はできるけれども、
腕を後ろに回す動作(結帯動作)だけが、できないということです。
動診してみます
動診してみます。
前から上げたり(肩関節の屈曲)、横から上げたり(肩関節の外転)してみます。
確かに動きます。
前から上げる(肩関節の屈曲)動作は、ほぼ問題なく動かすことができます。
横から上げる(肩関節の外転)動作は、確かに動かすことはでき、真上まで腕はあがりますが、途中外転90度の位置で肩に痛みが出現します。
腕を後ろに回す動作(結帯動作)は、確かにお尻のあたりで肩に痛みが走り、可動域制限がかかります。
症状は、左の肩関節です。
この方がいうには、いつも左の肩を下にして寝るクセがあって、ある時眠っていたら、左肩がギュ~っと痛くなったことがあった。
それ以来左の腕を後ろに回すことができなくなった、といいます。
もう5~6年もまえから、、、。
結帯動作の復習です
結帯動作は肩関節の問題ばかりではなく、肘関節、手関節までさらには、脊柱までも視野にいれて整体しないとなかなか改善しないものです。
結帯動作は、
肩関節の伸展(上腕を後ろにもっていきます)
前腕の回内(前腕を親指方向にまわします)
肘関節の屈曲(肘を曲げます)
手関節の撓屈(手首を親指方向に曲げます)
これらの動作が完璧にできないことには、手の甲が肩甲骨の間にまで伸びていきません。
このすべての動作に関わるどこかにコリ・拘縮があるとこの結帯動作は完成しません。
このことを踏まえた上で、この方の結帯動作の改善に取り組んでみます。
末端・手関節から整体します
結帯動作の動きを理解した上で、手関節から整体していきます。
左の橈骨茎状突起(とうこつけいじょうとっき)から始めます。
「肩が痛いのに、手から始めるんですか?」と驚かれます。
もちろんです。
可能性をひとつずつ検証・消去していきます。
手関節・前腕の回内の動きはスムーズになってきます。
手のひらを反す動きはでてきました。
けれども、まだまだ腕はお尻のあたりから上には上がってきません。
上腕・肩関節と触診し、整体していきますと、
肩の筋肉・三角筋がカチカチに固くなっていることがわかります。
三角筋を整体していきますと、結帯動作の動きが改善され始めます。
けれども三角筋の問題ではなさそうです。
触診の感覚では、上腕骨頭が下方にズレているように感じられます。
下方に亜脱臼しているようです。
肩関節が下方に亜脱臼しているため、この脱臼を保護するために三角筋が固くなり筋性防御しているようです。
亜脱臼をはめ込む整体を試みますが、筋肉がかたくなっているため、肩関節がはまるポジションまで持っていくことができません。
ひとつわかったことは、
肩甲骨に上腕骨頭をはめ込み、押し込むように「圧」をかけた状態で、結帯動作の動診をおこなうと、結帯動作が改善されるということです。
ですから、肩関節の下方への亜脱臼という見立ては正しいと思われます。
では、この亜脱臼を引き起こしている原因は何なのかを探るために、さらに触診していきます。
棘下筋と小円筋
すると、ここにコリを認めます。
棘下筋と小円筋が束になって上腕に向かう部位です。
ここが固くコリになっています。
ここを上に押し込むように整体すると、結帯動作が改善されます。
こんな風に考えます。
左肩を下にして寝ることで、左の上腕は内旋位になります。
内旋位ということは、棘下筋と小円筋にとっては、ストレッチの動き、引っ張られる動きです。
ストレッチの状態で外圧、外からの過剰な力がかかると、関節は外れる、と私は考えております。
ですから、左肩、左の腕を下にして寝ることで、棘下筋・小円筋にストレッチがかかり、さらに自分の体重で圧迫することから、荷重がかかり、亜脱臼が引き起こされたにちがいありません。
さらにこの亜脱臼を保護するために、隣接する筋肉である三角筋が固くなり、筋性防御をかけていると。
ですから、棘下筋と小円筋のストレッチされ、そのまま固くなった状態を整体し、柔軟性がでたところで、肩関節をはめ込むという手順になりそうです。
今回の整体では、まだ、この棘下筋と小円筋の整体が十分ではありませんから、次回以降、これらの筋肉を整体しながら、なんとか、この結帯動作だけができない四十肩・五十肩を改善に導きたいと考えております。