橋本敬三先生の「操体法の医学」から

「鹿を追う者山を見ず」を紹介します。
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「鹿を追う者山を見ず」

准南子の句。

医者は病気を治そうと思っているのだが、医学者は疾病そのものをつきつめんとする。

当然のことであるが、鹿ばかり見つめていると、とかく山を見ずで、現代医学は、鹿の研究にはずいぶん詳しいものだが、山の研究には盲点がある。

東洋医学は、山の方に詳しく、鹿の遊び場、通路、よく出てくる地点等を、証とか、経絡、または穴とか称して、ねらいうちをかける術を知っている。

私は山をこう見ている。

人の体を内部の中枢神経系と内臓系、外部の運動系にわけて眺めることとする。

これらが外界からのさまざまな刺激や栄養で変化する。

内外の機能が完全に営まれるためには、どの一つの系統をも切り離して考えてはならない。

各系統の間には、歯車のように組み合わされた連関作用がある。

これらの系統のうち、現代医学は、運動系のもつ連関性を見落としている。

運動神経系、内臓系の機能障害がある時、外の運動系に歪みを発見して整復調節すると、それらの機能が回復する。

東洋医学の物療はそれなのだ。

西洋医学者も、内臓機能障害が外に反応して、皮膚表面上に異常点を生ずることにだんだん気がついてきている。

しかし、運動系は骨格を基盤とする硬組織と筋肉を主として、皮膚までを含めた軟組織の二つの面が、いつも併行して歪んでくるのである。

外が歪めば、内に故障が起こってくる。

これに着目している人はほとんどいない。

中・内の機能と、外の運動系の状態とは可逆相関になっているのである。

運動系自身は連鎖運動装置になっているから、その力学をよく研究して、その静動両面に現れている歪みを治すのが物療の目標であって、これによって、未病を治し、また内なる機能の故障も、間接的に自然に回復するのである。

歪みなき運動系を有する人体には病はない。

体育の有効性は、この原理に基づくものである。

この外と内との連関のメカニズムの解明が、これからの医学に課せられたテーマである。
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ここで、橋本敬三先生は、ここで、靭帯の内部の中枢神経系と内臓系と外部の運動系とが連関していることを指摘している。

だから、「中枢神経系、内臓系の機能障害がある時、外の運動系に歪みを発見して整復調節すると、それらの機能が回復する」と記すわけです。

内部の障害は外にあらわれている。

外の歪みを正すと、内部の障害まで回復するというわけです。

その連関のメカニズムを解明せよ!と叱咤激励するわけです。

「歪みなき運動系を有する人体に病はない」

とまで、いいきります。

歪みなき人体を築くために!