ひどい坐骨神経痛で動けないくらいなのですが

朝、開院と同時に電話が鳴りました。

「かなりひどい坐骨神経痛で動けないくらいなのですが、
今日みてもらえますでしょうか?それと腱鞘炎もひどいのですが、、、」

お名前を伺いますと、どうやら本人ではなくご主人Yさんのことのようです。

「坐骨神経痛がかなりひどいので鍼をお願いしたいのですが」と奥様がいいます。

鍼をお願いしたいのですが

「とりあえず私の資格は、はり師ですけれども、
坐骨神経痛と腱鞘炎でしたら鍼をうたなくても大丈夫対応できるはずですよ」と伝えます。

震災で被災した山田町、盛岡から2時間弱もかかるところから来ていただくことになりました。

予約の時間にはまだ大丈夫余裕がありましたので、
「早めにお昼を食べておこうか」と口をうごかしている矢先
予約時間より30分も早くご来院です。
「お~っと待った」とばかりに机の上の食器を食べさしのままかたずけます。

2年以上前からの坐骨神経痛

ご主人と奥様、それに娘さんも同行しています。
チラと姿をみますと、大丈夫ひとりで歩いているではありませんか!
「ホウ、思ったより坐骨神経痛の症状は重くないな」とまずはひと安心です。

Yさんにお話を伺います。
震災に被災する少し前ころから坐骨神経痛になったとのことです。
ですからもう2年以上も坐骨神経痛に悩まされていることになります。

詳しくききますと、
左の臀部、腸骨稜周辺の「つっぱる感じ」が抜けないタイプの坐骨神経痛です。
足を伸ばして座るとその左の臀部からお尻、太ももの後ろのほうまで「ピ~ン」と突っ張るようになる坐骨神経痛です。

グーすると痛む腱鞘炎

Yさんの腱鞘炎は左手をグ~すると
小指の方にジ~ンと響くのだそうです。
もう4年前から手をグ~したり、ねじったりした時に痛むそうです。

整形外科を受診して腱鞘炎と診断されたとのことです。

腱鞘炎を触診してみます。
左手前腕の尺骨頭と手の月状骨および三角骨のジョイントするくぼんだ部位を押すと
痛みがはしります。

「そこを押すとひどいときは足の先までひびく」といいます。

お仕事を伺いますと
農業を営んでいて、どうしても手をつかったり重い物を持つたりという作業はつきもののようです。

「それでは、まず腱鞘炎からいきましょう」。

橈骨と尺骨の骨の操法

この腱鞘炎を解決するひとつのヒントは手を使う作業、握る動作を頻繁にしているということです。
早い話が腱鞘炎は「手の使い過ぎ」なわけです。
指であろうが手首であろうが、腱鞘炎は要は手の使い過ぎです。

だったら腱鞘炎を解決するためにやることはまず、
「橈骨と尺骨の骨の操法」です。

橈骨と尺骨をその骨のラインをたどりながら締めていきます。
肘関節に近い部位、「曲池」付近になりますと
「痛ててて」と声をだします。

「ここが痛いということは、ここの関節が緩んでいる証拠ですよ
そのせいで、腱鞘炎になったのだと思いますよ」といいながら
その声を柳に風と聞き流し、締めていきます。

「上橈尺関節を締めれば、テコの原理で下橈尺関節は緩み
下橈尺関節を締めれば、上橈尺関節は閉まるはず。
では、この下橈尺関節と手との間に生じたこの痛みをとるためには
上橈尺関節を締めるべきなのか、下橈尺関節を締めるべきなのか」という問題です。

この腱鞘炎の場合、上橈尺関節に賭けます。
「痛てて」といわれながらもジワジワと締めていきます。

あとは自信満々に「うん、ちょっと試してみますね。テスト」
といいながら、先ほど圧痛のあった腱鞘炎の部位を私が押してみます。

「どうですか?腱鞘炎の痛みはでますか?」

「いや、大丈夫です。痛くないです」

「自分でも押してみて下さい。腱鞘炎は大丈夫ですか?」。本人に確認してもらいます。

「うん、大丈夫だ。痛くない」

お~、腱鞘炎、大成功です。
コ~ン先生の骨の操法に感謝です。

こうなったら、こっちのものです。
この腱鞘炎の解説をしてあげます。

「手の使い過ぎで、肘の関節の下の部分がゆるんだから腱鞘炎になったんですよ。
ここをギュ~と自分で締めてやると大丈夫この腱鞘炎は出なくなりますよ~!」とアドバイス。

これで、腱鞘炎は一件落着です。

坐骨神経痛と大腿後面の筋肉

さて、お次は坐骨神経痛です。

けれども、「坐骨神経痛」というより、
その症状から推察すると、
大腿後面の筋肉、ハムストリングと臀部・臀筋の張りと考えてよさそうです。

けれども、臀部から後面にかけての症状ですから、坐骨神経痛と診断されてしまいます。

床に足を伸ばして座ると臀部と大腿後面が張る、つっぱるタイプの坐骨神経痛です。

臀部つまり、骨盤が原因の坐骨神経痛と考えた場合、そのアプローチとして、
素直に骨盤三軸と骨盤の骨の操法を選択しました(いづれも後日詳しく書くつもりです)

前屈・スーパー・マッケンジー操法

その後、最近のマイブームの操法、名付けて「前屈・スーパー・マッケンジー操法」を坐骨神経痛に対してやってみます。

「前屈・スーパー・マッケンジー操法」とは
マッケンジー体操というのは、うつ伏せになり、体幹をジワジワと自力で後屈させて、腰痛を治すというもののようです。

ここでは、その逆に体幹を前屈していってもらいます。動きのしずらい前屈をあえてしてもらうわけです。「痛い・窮屈なことをする!」。これって操体法のルール違反じゃん!

まあ、まあ、そうおっしゃらずに。効果が出れば、それでいいじゃないですか。けれどもこれだけではツマラナイわけです。ただの体幹の前屈運動です。

そこで、コ~ン先生の胸椎の骨の操法を(今先生の「骨の操法」DVDを参照のこと)、胸椎ではなく、もっと下、腰椎に対して施しながら前屈していってもらうわけです。特に狙うのは、腰仙関節、腰椎の5番と仙骨とがジョイントしている部分に指を添え、尾部方向に操者が圧を加えながら自力で前屈してもらうと良い結果が出ることが多いようです。また、もっと下、仙骨に手の平を添えながら前屈してもらつても成果がでる場合もあります。ケースバイケースで「圧」を加えるポジションを変えることでそれなりの成果が出てきます。

Yさんの坐骨神経痛には、腰仙関節と仙骨を試してみました。
腰仙関節だけでも上々の成果が得られましたが、
さらにおまけで坐骨神経痛のために「仙骨」も試みました。

足を伸ばして前屈してもらいますと
「あ~、さっきより突っ張る感じがなくなっている」とYさん。

ここでさらに欲張るのが私の悪いクセです。
さらにこの坐骨神経痛には、骨盤と股関節を締めてあげようかなと欲をだします。

i-position

坐骨神経痛を狙った
座位からのi-positionです。
i-positionで伸びてくる足を片手でうけながら
もう片方の手で股関節を狙って大転子の上部
また、臀部および骨盤をねらって中殿筋に手を触れ
「圧」を加えていきます。

左右どちらもバランスが整っているとの判断で、
左右どちらもi-positionを行い、この坐骨神経痛の整体を終えることにしました。

仕上げの「足ゆらし」をしている時です。
Yさんが、「さっき(i-positionの時)、手のひらから何か出したべ!」と言います。

「はぁ~?」と私。

「お尻をグ~ッと押した時お尻が何か熱っつくなったっけがら、
手のひらから何かだしたべ!」

「はぁ~?オレはそういうの嫌いだから、ただ、理屈どおりやってるだけですよ~、ハッハッハ!」

「はぁ~。オレは気功師かい」。

なんと、思わぬ「気功使い」にされてしまったようです。

ありがとうございました。