ふくらはぎの筋肉のコリが原因の腰痛

腰痛の原因としての「ふくらはぎ」

腰痛の原因のひとつとして、ふくらはぎの筋肉群がトリガーポイントとなっているケースは多いものです。

「ふくらはぎ」の筋肉群が原因の腰痛の特徴とそのメカニズムについての私なりの理解と説明をしてみようと思います。

「腰」という漢字は良くできていて、体を表す「にくづき」と「要(かなめ)」からできています。

体の要(かなめ)に位置しているから、腰ということです。

体の要(かなめ)中心に位置していますから、上肢からも下肢からも影響をうける、ということにもなります。

ですから、腰痛、腰の痛みの発生の原因となるトリガーポイントは、上肢(前腕・上腕・首)にもあり、また下肢(ふくらはぎ・太もも・お尻)にもある可能性がある、ということです。

それでは、腰痛のトリガーポイントが上肢にあるのか、下肢にあるのかを見つけだす、鑑別方法です。

腰痛のトリガーポイントの鑑別方法

私が学び続けている「操体法」という健康管理術では、体を動かしてもらいながら、

その動きの中での違和感、痛みの出現を再現しながら、

また、その違和感・痛みが操体法を行った後で、どのように解消されるかを一つの目安にしています。

腰痛のトリガーポイントの鑑別方法の一つとして、この動いてもらう、動診を必ず行うわけです。

立ってもらい、そこから、体全体を前に倒してもらったり(体幹の前屈)、体全体を後ろに反らしてもらったり(体幹の後屈)してもらいます。

一つの私の仮説ですが、

体全体を前に倒してもらって(体幹の前屈)、腰に痛みや違和感が出現する場合は、下肢にそのトリガーポイントがあると判断します。

反対に、体全体を後ろに倒してもらって(体幹の後屈)、腰に痛みや違和感が出現する場合は、上肢にそのトリガーポイントがあると判断します。

首にトリガーポイントがある場合、またちょっとちがう動診の結果がでますが、

手と足にトリガーポイントがある場合は、おおむね、この仮説は当たっていると思われます。

なぜ腰に痛みが出現するのか?

それでは、腰に痛みが出現するメカニズムについてみていきましょう。

上肢が原因の場合の腰痛と下肢が原因の場合の腰痛です。

まず最初に、この腰痛が出現する部位である、腰をみてまましょう。

いわゆる腰という部位は、背中・背面の肋骨の一番下のラインと骨盤のラインとの間の部位を指して、いわゆる「腰」としておきましょう。

ちょうど、この腰の部分は、背骨が縦に一本通っているだけで、肋骨と骨盤のあいだには骨はなく、筋肉で囲まれています。


<腰方形筋>

ここにちょうど位置しているのが「腰方形筋」です。

カパンディ「関節の生理学・Ⅲ体幹・脊柱 P89」の写真です。

腰痛のほとんどが、この腰方形筋上に痛みをだすことから、この腰方形筋が腰痛の原因の本丸のようにいわれますが、

この腰方形筋は痛みの原因の筋肉ではなく、痛みを出している筋肉だと思われます。

膜のように肋骨と骨盤を結ぶこの腰方形筋にテンションがかかることで、痛みが出現すると、私は考えています。

この腰方形筋にテンションがかかるメカニズムを考えていきます。

ここでもまたカパンディの骨盤の動きについての解説を引用します。

カパンディ「関節の生理学・Ⅲ体幹・脊柱P100」に「腹壁の筋群・腰椎彎曲の平坦化」と題して書かれています。

「腰椎湾曲の平坦化」という、これまたわかりづらい表記なわけですが、

腰骨がまっすぐになってしまうメカニズムについてです。

ここに、骨盤の動きについての記述があり、この記述が腰痛のメカニズムを解くカギがあるわけです。

「彎曲の平坦化は骨盤レベルからはじまる」。

背骨がまっすぐになってしまうのは、骨盤の動きが関係しているということです。



「ハムソトリングや大殿筋が収縮すると骨盤を後傾させ、腰椎彎曲を減少させる」。

この図をみると、お尻の筋肉・大殿筋が収縮しても、

お腹の筋肉・腹直筋が収縮しても、

骨盤が後傾することがわかります。

そう、腰痛の原因の一つがこの骨盤の後傾です。

骨盤が後傾すると、腰痛の痛みを出現させる筋肉である腰方形筋にテンションがかかるわけです。

そして、腰に痛みが生じることになる、と私は考えています。

上肢が原因の腰痛と下肢が原因の腰痛

腰痛の原因の「ひとつ」として、腰方形筋にかけられるテンションが考えられることを説明したわけですが、

この腰方形筋にテンションをかけているのが、骨盤の後傾なわけです。

骨盤の後傾は、

体幹の前面の筋肉である「腹直筋」と

体幹の後面の筋肉である「大殿筋・ハムストリングス」

の収縮によって引き起こされることをカパンディは説明しています。

このことを、

「腹直筋」に連結する筋肉群による腰痛と

「大殿筋・ハムストリングス」に連結する筋肉群による腰痛。

このように読み替えてみます。

すると、

「腹直筋」に連結する筋肉群による腰痛とは、上肢に原因のある腰痛であることが導かれてきます。

「大殿筋・ハムストリングス」に連結する筋肉群による腰痛とは、下肢に原因のある腰痛であることが導かれてきます。

下肢に原因のある腰痛

ここで、今度は、筋肉の連動・連結について考えてみます。

筋肉は単独でひとつの筋肉として動くのではなく、ほんのささやかな動きでさえも、全身の筋肉が作動していると いわれています。

この筋肉の全身への連動は、

筋肉の物理的な連結と

筋肉の運動的な連結

によって、引き起こされると、私は考えます。

物理的な連結とは、筋肉と筋肉とが物理的に結びついているということです。

このことにより、一つの筋肉が作動すると、隣接する筋肉が作動することになります。

筋肉の運動的な連結とは、ひとつの動きに対して、その動きに関連する筋肉群が一緒に作動するということです。

例えば、体・体幹を左にねじる動作をすると、体幹ばかりか、腕・足もその動き、ねじりに対応する筋肉が作動すると考えます。

このように筋肉の連動を考えてみますと、

「大殿筋・ハムストリングス」に連結する筋肉群による腰痛とは、大殿筋・ハムストリングスばかりではなく、

もっと先、もっと末端の「ふくらはぎ」、さらには足指の先までも視野にいれていかなくてはならないということです。

なかでもやはり、「ふくらはぎ」の筋肉群の重要性は特筆に値するものです。

腰痛の場合、まず疑うべきは、「ふくらはぎ」のトリガーポイントです。

ふくらはぎの筋肉群



ふくらはぎの筋肉群をみていきます。

「色を塗ってわかる解剖学」からの図です。

ふくらはぎの筋肉群をおおまかに3層にわけてみていきます。

*この本では4層に分類していますが、、、。

一番表層・表面にあるのが、この図では右端ですが、腓腹筋です。

ふくらはぎを触れて、直接、触れることができる筋肉がこの腓腹筋です。

その下にあるのが、ヒラメ筋です。

ふくらはぎのタプタプした筋肉が腓腹筋で、その奥の腓腹筋を支えているのがヒラメ筋です

下肢の骨・脛骨の骨際で触れることができるのがこのヒラメ筋です。

そのまた奥に、後脛骨筋・長趾屈筋・長母指屈筋が位置しています。

*ここでの説明では、膝窩筋と足底筋は割愛させていただきます。

これらの筋肉群にトリガーポイントがあるとその筋肉群は収縮し、

筋肉の物理的な連結と

筋肉の運動的な連結

を介して、ハムストリングス・大殿筋にその収縮の力・テンションが伝わり、骨盤を後傾させます。

骨盤が後傾すると、さらに、腰痛の痛みを発する筋肉である腰方形筋にテンションをかけ、

腰方形筋に分布する痛みを感じるセンサーが作動して、痛みを脳に伝える、ということが起きてきます。

これが、下肢が原因の腰痛の発生するメカニズムだと、私は考えております。

ふくらはぎを掴む

それでは、下肢に原因がある場合のトリガーポイントを触れていきましょう。

これは、あくまで、一般論です。

そのトリガーポイントの位置は、個人差があるため、

反応点、コリを触れるポイントをそのトリガーポイントとして定めていくべきです。

経穴の教科書のように、上三寸のように定まっているわけではないと考えるべきです。

「その周辺のコリ」といった大雑把なとらえ方で良いと思います。

あとは、現場での触診力の問題です。



まずはここです。

三陰交という有名なツボです。

内くるぶしからちょっと上のあたりを触れてみます。

ここには、ふくらはぎの一番深層にある筋肉、後脛骨筋と長趾屈筋が位置しています。

ここを触れることで、ふくらはぎの深層の筋肉にアプローチできます。

この同じ高さで、外くるぶしを触れます。



ここです。

膀胱系の「跗陽(ふよう)」です。

経穴の教科書では、ヒラメ筋とありますが、

ここは、長母指屈筋の付着部と考えてよいでしょう。

長母指屈筋は腓骨の後面の遠位三分の二の領域に付着するとの記述があります。

つまり、「三陰交」と「跗陽(ふよう)」とは同じ高さにあるということですから、

この内側と外側を手で触れて、握り込んでいくわけです。

すると、ふくらはぎの深層の3つの筋肉に一気にアプローチすることができます。

ふくらはぎの筋肉の構造を3層にわけて、分類、説明したわけですが、

この「三陰交」と「跗陽(ふよう)」は一番深層の筋肉といえます。

その上の層にはヒラメ筋が位置します。

ヒラメ筋は一番表面の腓腹筋を支持するように位置しているのですが、

このヒラメ筋に触れるには、



ここです。

下肢の外側の骨の、でっぱり(腓骨頭)の下です。

ここを触れること、掴むことで、ふくらはぎの中間層を整体することができます。



また、ヒラメ筋で欠かせないのが、下肢の骨(脛骨)の内側にそったラインです。

このふくらはぎの内側と外側を握るようにつかみますと、

ちょうど、中間層のヒラメ筋と表層の腓腹筋との筋筋膜に触れることができます。

ここを触れることで、さらに表層の腓腹筋までアプローチすることができます。

これらのふくらはぎの筋肉群のトリガーポイントを解消するだけで、腰痛、ぎっくり腰の痛みを緩和させてあげることができるものです。

腰痛の施術となると、ついつい腰回りの筋肉にファーカスしてしまいますが、ふくらはぎの筋肉群の筋膜リリースは必須のポイントだといえます。腰痛の場合、まず丁寧にふくらはぎの筋肉群の触診から始めることを推奨します。驚くほどの効果をだすことができるはずですよ。