目次

1.四十肩・五十肩とは?病名は肩関節周囲炎です
2.四十肩・五十肩の原因
3.四十肩・五十肩の症状
3-1肩関節の屈曲で痛みと可動域制限が出るケース
3-2肩関節の伸展で痛みと可動域制限が出るケース
3-3肩関節の外転で痛みと可動域制限が出るケース
3-4肩関節の内旋で痛みと可動域制限が出るケース
3-5このほか肩に痛みがでるケース
4.四十肩・五十肩は放っておいても治るのか?
5.四十肩・五十肩の適応症状と治療方法
  5-1操体法の創始者・橋本敬三先生のアプローチ
  5-2トリガーポイントブロックの加茂淳先生のアプローチ
  5-3整形内科のアプローチ
6.四十肩・五十肩(凍結肩)のメカニズムと治療ポイント
7.四十肩・五十肩の臨床動画
8.四十肩・五十肩の探究レポート一覧

四十肩・五十肩とは?病名は肩関節周囲炎です

四十肩・五十肩とは、肩の関節のまわりに痛みを感じたり、その痛みのために腕をあげることができなくなったりすると、「ああ四十肩ね」とか「ああ五十肩ね」と言われることになります。四十代や五十代のいわゆる働き盛りの方々が発症するケースが多いことから「四十肩」、「五十肩」と言い慣わされています。

この肩関節のまわりの痛みや、その痛みのために腕をあげれなくなった症状を医学的には「肩関節周囲炎」と命名されています。

「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と言われるとなにやらムツカシそうな病名になってしまいます。この病名を分解してみましょう。

<ここが肩甲骨と上腕骨のジョイント部・肩関節です>

こうなります。「肩(かた)」・「関節(かんせつ)」・「周囲(しゅうい)」・「炎(えん)」となります。肩の関節、肩甲骨と二の腕(上腕)のジョイント部分のまわりで炎症がおきていますよ、という意味になります。周囲というのがひとつのポイントで、この四十肩・五十肩を発症した方によって、その痛みがでる部位に個人差、ひとそれぞれちがうということです。ですから周囲という表現を使っているのだと推察します。

四十肩・五十肩の原因

四十肩・五十肩がなぜ起きるのかというと、医学的には原因が明らかになっていないというのが正直なところのようです。ですから、加齢、年のせいですと言われたりするようです。けれども四十代~五十代の方にたいして「加齢ですから」というのもなんとも失礼な話ではないかとわたしは思います。

四十肩・五十肩の原因を加齢のせいにする根拠として、年齢を重ねるにつれ、筋力の低下や関節の可動性が低下するという変化が起こりやすくなり、このような加齢に伴う変化により、四十肩・五十肩は発生しやすくなるともいわれています。

わたしはこう思います。加齢ではなく、働きすぎて肩のまわりの筋肉を酷使したことから、肩のまわりの筋肉が固くなり「コリ・ファシア」が形成され、腕が上がらなくなったり、炎症を起こして痛みを出しているに違いない、と。加齢ではなく働きすぎ、肩まわりの筋肉の使い過ぎですよ、と。

四十肩・五十肩の臨床に携わってきて、一番多くの方が痛みを訴える位置はここだとわたしは思います。

<上腕骨大結節稜(じょうわんこつだいけっせつりょう)>

腕を動かすと、二の腕・上腕の前のあたりに痛みを訴える方が多いわけです。解剖学では、「上腕骨大結節稜(じょうわんこつだいけっせつりょう)」と名付けられているところです。この上腕骨大結節稜周辺には「大胸筋」・「広背筋」・「大円筋」といった筋肉が付着しています。この3つの筋肉はいずいれも肩関節を「内側にねじる」動きをします。

肩関節を「内側にねじる」動きというのは、パソコンのキーボードに手を置く動作であったり、、車のハンドルを握ったりする動作の際の動きです。また鉛筆を握って書き物をする動作でもこの筋肉は作動します。このような毎日あたり前にこなしている動作が長時間、長い年月続きますと、筋肉はその作業のクセがついてしまい、そのまま拘縮、固くなってしまいます。すると、肩関節を「内側にねじる」動作以外のすべての動作が不自由になり、肩関節の可動域制限が起きてしまいます。このようにわたしは考えます。

四十肩・五十肩でお悩みの方は、毎日の自分の仕事の姿勢、動作を振り返ってみてください。パソコンに向かって一日中、作業をしていませんか?毎日遠方まで車の運転をしていませんか?思い当たることがあったなら、そういう小さい日常生活を改善する努力をしていきましょう!盛岡せんぼくバランス治療院もあなたの四十肩・五十肩の改善のお手伝いをさせていただきます。

四十肩・五十肩の症状

四十肩・五十肩を発症してしまいますと、腕を動かした時に痛みが出たり、腕を上にあげられなくなったり、腕を後ろに回せなくなったりします。以下の写真のように、肩関節が思うように動かなくなってしまいます。

肩関節の屈曲で痛みと可動域制限がでるケース

この動作、腕を前から上げていく動作が肩関節の屈曲です。

この動作に可動域制限がでますと、洗濯ものを干したり、電車のつり革につかまることができなくなります。

肩関節の伸展で痛みと可動域制限が出るケース

この動作、腕を後ろから上げる動作が、肩関節の伸展です。

この動作に可動域制限がでますと、洋服の着替えの際に、肩に痛みが出て、なかなか思うように着替えができなくなります。

肩関節の外転で痛みと可動域制限が出るケース

この動作、腕を横から上げる動作が、肩関節の外転です。

これでは、髪を洗うのも支障をきたしてしまいます。

肩関節の内旋で痛みと可動域制限が出るケース

この動作、腕を内側にねじる動作が、肩関節の内旋です。

この写真は、少々わかりにくいのですが、腕をうしろに伸ばしてもらい、それから腕を内側にねじってもらっています。けれどもこのように大変な関節の可動域制限のためこのような動きになってしまいます。いわゆる結帯動作、帯を後ろで結ぶ動作、エプロンを後ろで結ぶ動作です。

このほか肩に痛みが出るケース

このほか肩の周りの痛みを訴えるケースでは、夜眠っていると肩の痛みで目が覚めてしまう、眠れない、と訴えるケースもあります。

このケースは日常生活、例えばパソコンに向かう作業が続きすぎて、肩甲骨がすっかり前に入ってしまい(運動学的には肩甲帯の外転です)、姿勢が丸くなってしまい、この体勢が当たり前、正常になってしまったと考えることができます。

そして夜寝ていると、重力が下にかかりますから、肩甲帯は下に下がり、引っ張られテンションがかかります。

テンションがかかるので肩周辺に痛みがでてしまいます。あまりにも背中が丸くなってしまい、肩甲帯が前に入ってしまったことが原因となって、あおむけで寝ると、重力によって肩の位置が押し下げられテンションが発生し肩関節周囲に負担がかかり痛みが出るといえます。長時間のパソコン作業が続いたため肩の周辺の筋肉が収縮して固くなったところに、夜、あおむけで寝ると重力により筋肉が下にひきのばされてしまうので肩関節周辺に痛みを発生させてしまいます。

このように四十肩・五十肩の運動制限からくる肩の痛み、夜眠っているときの肩の痛みの症例をご紹介しました。あなたの四十肩・五十肩と同じ症状はありましたでしょうか?

四十肩・五十肩は放っておいても治るのか?

よくこんな話を耳にします。「四十肩・五十肩なんて、放っておけばなるものさ」と。当院にご来院いただいた方からもこんな話を聞いたことがあります。とある整形外科で四十肩・五十肩を診てもらったところ「一年も放っておけば治りますからといわれ、湿布と痛みどめを処方されて様子をみることになりました」と。放っておいても治る四十肩・五十肩も事実あったのでしょうから、整形外科の医師もそのように言ったのでしょう。けれどもわたしは「四十肩・五十肩は放っておいても治りませんよ、放っておくとますます悪くなります」と考えております。

一年以上も放っておいて治った四十肩・五十肩というのは、放っておいたのではなく、腕を動かせば痛みが出てどうしようもないので、腕を使う動作を控えて、いたわってあげたおかげで回復したのだと思われます。いたわってあげたのではなく、これまで通りの生活を続け、同じように腕や体を酷使し続けていたのでは、その四十肩・五十肩はますます悪化の一歩をたどっていたはずです。いたわってあげたおかげで、腕・肩をとりまく筋肉の「コリ・ファシア」が解消され四十肩・五十肩が治ったのだとわたしは思います。放っておいても治る四十肩・五十肩もあると思います。けれども、なぜ四十肩・五十肩を発症したのか、その原因をつきとめて、その原因となっている体の使い方、姿勢の問題を指摘し、解消することをしてあげない限り、放っておいても治る奇跡は起こりはしないと考えております。

四十肩・五十肩の適応症状と治療方法

四十肩・五十肩の治療とはいっても「はり師・きゅう師」の国家資格者である盛岡せんぼくバランス治療院の対応できる症状は自ずから限られたものになるのは仕方のないことです。四十肩・五十肩は大まかに3つの症状に分類できます。

四十肩・五十肩の症状の分類
①凍結肩(frozen shoulder)=いわゆる「四十肩・五十肩」や肩関節周囲炎を指します。
②腱板断裂=肩関節をむすぶ「腱」の断裂・損傷です。
③石灰性腱炎=肩関節の中に石灰が形成されたことが原因の肩痛、肩関節の可動域不全。

これらの症状を問診・動診を踏まえた上で鑑別し、盛岡せんぼくバランス治療院が対応できる症状はこのうち①に限られることになります。②と③については整形外科の受診を進めることになります。①の凍結肩はその原因が筋肉の拘縮ですから、筋肉の拘縮を引き起こしている「コリ・ファシア」を的確に見つけだしリリースしていくことになります。筋肉の拘縮をリリースするとはいいましても、拘縮した筋肉をリリースし正常な状態まで回復させるには、患者さんの個人差はありますが、長期化することはしばしばです。このページのトップ写真に使わせていただいた患者さんの例ですと、正直なところを申しますと半年も要してしまいました。それほど、この四十肩・五十肩=凍結肩(frozen shoulder)は厄介な手強い症状です。わたしがこれまでに学んできた四十肩・五十肩の治療方法、アプローチの仕方を紹介します。

操体法の創始者・橋本敬三先生のアプローチ

操体法の創案者・橋本敬三先生の著書・「操体法写真解説集」の五十肩についての解説からです。

四十肩・五十肩の症状も決して突発的に起きたのではない。(本人が勝手にそう思っているだけである)

当初は、脚・腰(脇腹)・背中に発生した異常感覚の警告信号がジワジワと増加した結果である。

肩治療に携わる99%の人達は、苦痛の発生部位と運動制限に目をうばわれ、そこだけに対症的手段を施すが、それでは片手落ちである。

他部位に発生した歪みが連続的に肩関節の運動を制限し、痛覚が発生するという原理を無視した処置法などは、我がままな子供にチョコレートを預け気げんとりおしているに等しい。

肩が痛いからといって肩を治療するのではなく、「他部位に発生した歪み」が肩関節の運動を制限し、痛みを発生させているのだ、という指摘です。肩が痛いからといって、そこに「コリ・ファシア」があるのか?といえば、肩にテンションがかかり痛みと炎症は起きているかもしれませんが原因となる筋肉の「コリ・ファシア」は、ほかの部位にあることがほとんどです。それは「手のひら」であったり、「指」であったり、骨盤であったりします。その原因となる「コリ・ファシア」を触診と動診を交えながら探求していきます。

トリガーポイントブロックの加茂淳先生のアプローチ

加茂淳先生は、痛みは筋肉のコリ・スパズムが原因で引き起こされると考え、そのコリ・スパズムに注射針で麻酔薬を注入し、コリ・スパズムを解消するという治療法を行っています。やはり、痛みの原因として筋肉のコリに着目しています。

筋肉にこり、スパズムが生じ、それをうまく終息できないと、やがてそれは全身に広がっていく。

筋肉のこわばりや痛みのため、いつも疲労感を感じ、それがストレスになって、病状を悪化させるーという悪循環をつくっていきます。

整形内科のアプローチ

整形内科の医師たちはエコー診断装置を使い、筋肉の「コリ・ファシア」を画像で確認しながら、その「コリ・ファシア」に加茂先生のように麻酔薬ではなく生理食塩水を注入し、その「コリ・ファシア」をリリースするという治療法を採用しています。

<THE整形内科・南山堂>

整形内科の医師は、四十肩・五十肩の治療について次のように記しています。

腱板断裂に限らず、有痛性肩疾患の運動療法の基本は、骨頭求心性の維持・改善に尽きる。
*骨頭求心性:肩関節は骨頭(ボール)と関節窩(ソケット)で形成される。骨頭の位置が、適切に関節窩の中心方向に引き寄せられているのが正常である。骨頭の求心性とは、肩関節動作中に、骨頭が常に関節窩の中心方向に向かっていることを示す。

分かりやすく述べれば、肩関節のジョイントが正しく接合されているかどうか、それが問題だ、ということです。けれども肩関節のジョイントを歪めているのは肩関節をとりまく筋肉であり、筋肉の「コリ・ファシア」が肩関節のジョイントを歪めているのだと言いたいのだとわたしは理解しております。やはり筋肉、筋肉の拘縮が四十肩・五十肩の原因であり、その筋肉の「コリ・ファシア」をリリースすることが四十肩・五十肩を解決する手立てだとわたしは考えております。

四十肩・五十肩(凍結肩)のメカニズムと治療ポイント

四十肩・五十肩の臨床動画

盛岡せんぼくバランス治療院の四十肩・五十肩の臨床動画を紹介します。このほか、患者さんの症状に応じて、できる限りの施術を行います。

(右肩が痛くて上がらなかったのですが、骨盤矯正だけでも、このように、ずいぶん腕の上がりがよくなりました)

(一番やっかいな結帯動作、腕を後ろに回す動作へのアプローチです。体の動きを使ったアプローチ、操体法からのアプローチです)

(肩を横から上げる動作には、トリガーポイントを確認して、「コリ・ファシア」をリリースする「筋膜・骨膜リリース」も使います。)

四十肩・五十肩の探究レポート一覧