三軸操体法を理解するための覚書

 この覚書は去る23年8月6日に行われた操体医学院での
三軸操体法についての、コ~ン先生の解説を理解できなかった
コトに端を発しています。

 なんとか理解しようと、その後、思いを巡らした結果、
コ~ン先生が説明しているコトがやっと、理解できました
(つもりです)。その理解にいたるまでの過程をたどることで
、これから、三軸操体法を学ばれる人たちの一助になればと思
い書き残すことといたしました。

 この覚書で目指したコトは、コ~ン先生の著書「楽しくわかる
操体法」の三軸操体のページを読み解くコトです。
また、この著書で示されている「三軸のイラスト」を理解できる
ようになるコトです。

このイラストが理解できますと、コ~ン先生が三軸の解説の際に
使われる「十字のベルト」の意味が理解できるようになると思われます。

 この覚書は、池上先生の三軸修正法の著書を参考にしながら、
コ~ン先生の三軸操体法を読み解いていく試みです。

* 著書の引用は次のように略させていただきます。

今昭宏著「楽しく操体法」=「楽しく」

池上六朗著「三軸修正法・基本篇」=「基本篇」

池上六朗著「三軸修正法」=「修正法」

はじめに

 三軸操体は、池上六朗氏が提唱する三軸修正法をヒントに、
それを操体の中でアレンジした1つの提案です。
「動き」そのものを新たな視点でとらえ直してみると、快適な
動きにいちはやくたどり着くことができるナビゲーションの
ようなシステムがあることに気がつきます。

それにはまず、今までの発想を少し変えて「動き」を「軸」と
いう視点で捉えなおす必要があります。(楽しく)

三軸的なヒトのカラダのとらえかた

① カラダは、小さな粒子がたくさん集まってできている。

② その粒子は、生物であるという秩序を保ちながらも、
   物理的な秩序の拘束も受けていて、その法則にも敏感に従うモノである。

③ その粒子は、あるときは単体で、あるときは房や群になって機能する。

④ その粒子は、内外からの作用の緩衝物、緩衝器としての機能もはたすため、

   その作用に対してある程度、緩慢に反応する。

⑤ たとえば、茶殻をいれたコップを持って、カラダを回転させてからコップの中を観ると、カラダの回転が止まってからも、しばらくのあいだ、茶殻はカップの中をまわっている。同じように、カラダ全体を回転させてから、カラダの回転を止めたあとも、その粒子はしばらくのあいだ、その回転を維持する。(修正法)

このようなヒトのカラダのとらえかたを共通認識として、ヒトのカラダの動きをみていきましょう。

基本動作は6方向

身体の動きはいろいろな動きが重なりあって、ひじょうに複雑に見えますが、これを次の三つの動きに分けることができます。(基本篇)

(A)前屈・後屈

(B)右側屈・左側屈

(C)右ねじり・左ねじり

以上の3組に分類されます。(楽しく)

この3組の「動き」を「軸」という視点で捉えなおしてみましょう。

(A)の前屈・後屈の動作は、水平の左右軸の回転運動(ピッチング)。

(B)の右側屈・左側屈の動作は水平の前後軸の回転運動(ローリング)。

(C)の右ねじり・左ねじりの動作は垂直の上下軸の回転運動(ヨーイング)

―として捉えることができます。(「たのしく」・「基本篇」)

ここまでは大丈夫理解できます。さて、ここからです。

身体運動の基本動作は以上の3本の軸の回転運動によって成立し、動きによってそれらの運動軸が、ある指向性をもって発生するものとしてとらえます。(「楽しく」)。

* この部分の内容を理解するためには、少々回り道をしなくてはなりません。

回転運動の物理法則

物体の回転運動に伴う物理法則には

① 回転惰性(方向保持性)

② プレセッション(軸旋回)

―という二つの法則があります。

回転惰性とは、回転する物体の回転軸は、ほかからトルク(回転偶力)を受けない限り、地球の自転や公転などの運動とは関係なく、宇宙の空間に対して、ある一定の方向を保持するというものです。

プレセッションとは、回転する物体に、その物体の回転軸と異なる方向を回転軸とするトルクが作用すると、その物体の回転軸は、物体が回転することにより生じた回転ベクトルと、あとから作用したトルクにより生じた回転ベクトルを合成した方向に、最も近い経路を経て、旋回しその軸方向を変える、というものです。(基本篇)

ややこしいですね。もっと簡単にまとめてみますね。回転惰性とは、一つの回転運動は他からの力が加わらない限りその回転運動を保ち続けるということです。

ですから、前屈だけであれば、それは前屈だけの方向の回転運動です、ということです。

トルクとは、一つの回転運動とは別の回転運動がぶつかることくらいの理解で良いと思います。例えば、前屈に対して側屈を加えれば、その側屈の運動がトルクということです。

プレセッション。これが早い話が、「軸の合成」ということです。前屈して側屈のトルクを加えると、新たな方向へ回転の運動ベクトルが生まれます、ということです。

プレセッション

池上先生はコマを例に説明します。

コマを、上から観て、右回りに回します。

そのコマの軸の上端を、向こう側に倒そうとすると、その軸は向こう側にたおれず、右の方に倒れようとします。

この現象を整理しますと、

「コマを倒そうとすると、そのコマは、倒そうとする方向より回転方向の、90度さきの方向に倒れようとする」

というコトが言えます。

たとえば、右回りのコマを、右に倒そうとすると、倒そうとした右から、右回りに90度さきの方、すなわち、手前に倒れます。(修正法)

この90度さきに合成される動きを利用するわけです。90度さき、前という意味で「プレ」という言葉を使っています。

三軸修正法とは

この三軸修正法は身体にわずかな回転運動を二回与えて、その回転ベクトルの合成により身体運動に必要な、身体各部の粒子に軸旋回(プレセッション)を起こさせるといった原理によるものです。

ですから、身体内部から無理なく各動作が変化し、その組み立ていかんでは、機能変化による身体の痛みやコリ等を簡単に処理することができます。(基本篇)。

右ねじの法則

このプレセッション・軸の合成の方向を一言でいうと、「右ねじの法則」ということになります。

右手でグーをしてみます。親指は突き出します。右手のグーが回転の方向です。そして、突き出した親指の方向、これがプレセッション。トルクが加わり軸が合成された際にひきおこされる運動軸の方向を示しているわけです。

プレセッションによる運動軸

それではいってみましょう。

(A)の前後屈は水平の左右軸

(前屈は左向き、後屈は右向き)(「楽しく」)

この記述は、前屈の回転運動にトルクが加わると、左向きにプレセッション・軸が合成される、ということです。

同じように、後屈の回転運動にトルクが加わると、右向きにプレセッション・軸が合成されます。

(B)の左右屈は水平の前後軸

(右側屈は前向き、左側屈は後ろ向き)

右側屈の回転運動にトルクが加わると、前向きにプレセッション・軸が合成されます。

左側屈の回転運動にトルクが加わると、後ろ向きにプレセッション・軸が合成されます。

(C)の左右ねじりは垂直の上下軸(右ねじりは下向き、左ねじりは上向き)

右ねじりの回転運動にトルクが加わると、下向きにプレセッション・軸が合成されます。

左ねじりの回転運動にトルクが加わると、上向きにプレセッション・軸が合成されます。

復習です

それではもう一度、コ~ン先生の著作を読んでみましょうね。

身体運動の基本動作は

水平の左右軸・水平の前後軸・垂直の上下軸の3本の軸の回転運動によって成立します。

この3本の軸の回転運動の動きによってトルクが加わり、プレセッション・つまり新たな軸が発生します。

運動軸が、ある指向性をもって発生するものとしてとらえますーとは三本の軸の回転運動によりトルクが加わることによりプレセッション・運動軸が合成されますーということを説明しています。

軸の指向性

このような6つの動きの軸の指向性が生まれます。腰を中心に動きで発生する軸について考えてみると、まずそれぞれの軸が下腹部の中心(丹田)で直角に交叉する状態を生むのが理想的なバランスとして考えます。(「楽しく」)

三軸人形をつくりましょう

この<軸の指向性>を理解するためにも、「三軸人形」をつくってみましょう。

ホームセンターでソケットをみつけましょう。上下と前後・左右に穴の空いたソケットです。そこにエンビのパイプを差し込むだけです。総額500円ほどでできあがります。

私はさらに工夫して、家にあった人形のお腹にそのソケットを埋め込みました。

ここからがミソです。

できあがった人形の

前方のパイプに「右側屈」と書きます。

後方のパイプに「左側屈」と書きます。

左方のパイプに「前屈」と書きます。

右方のパイプに「後屈」と書きます。

上方のパイプに「左ねじり」と書きます。

下方のパイプに「右ねじり」と書きます。

この書き込んだ動き、これがプレセッション・軸が合成された場合の動きの方向なわけです。

前屈や後屈といった動きが問題なのではなく、その動きにトルクが加わり、軸が合成された場合の方向のベクトルが問題になってくるわけです。

ですから、軸が合成された方向で考えていくわけです。

その合成された軸の方向をパイプに書き込んだわけです。

不快な動きとは

動きが不快に感じるときは、その動きにかかわらない他の2つの交叉軸が、その不快な動きとは反対方向に回旋してしまっているものと理解します。(「たのしく」)

ここがムツカシイですよね~!

その前にまず、三軸修正法のカラダのコントロールの仕方をみておきましょう。

① 前屈・後屈動作を楽にするには、前後の運動はせず、左屈・右屈動作と左右の回旋動作の組み合わせの動きを行えばよいのです。

② 左屈・右屈動作を楽にするには、左右の運動はせず、前屈・後屈動作と左右の回旋動作の組み合わせの動きを行えばよいのです。

③ 左右の回旋(ねじれ)動作を楽にするには回旋動作はせずに、前屈・後屈動作と左屈・右屈動作の組み合わせを行えばよいのです。(基本篇)

このカラダのコントロールを踏まえた上で、このコ~ン先生の文章の内容を考えてみましょう。

「動きが不快に感じるとき」とは、例えばこういうことです。腰の中心軸が前屈になっている、前かがみになっていると仮定します。そうしますと、前屈の動作が楽であり、後屈・後ろに反らす動作は窮屈になります。

ここまでは、いいですよね?骨盤が前傾していたら、後屈はしずらいでしょ?

「その動きにかかわらない他の2つの交叉軸が」

とは、前屈・後屈とは別の2つの軸ということです。つまり、左右の側屈の軸と左右のねじりの軸ということです。

「その不快な動きとは反対方向に回旋してしまっているものと理解します」。

ここで、コ~ン先生の図をみてみます。

「快A」-「快C」の軸と「快B」-「快D」の軸が理想的なバランスのベクトルです。この理想的な軸が「不快な動きとは反対方向」つまり、楽な方向、前屈の方向にまわってしまっています、ということです。

これを深読みしますと、こうなります。

三軸修正法を使いますと、

左ねじりー右側屈で前屈にプレセッションします。

右側屈―右ねじりで前屈にプレセッションします。

右ねじりー左側屈で前屈にプレセッションします。

左側屈―左ねじりで前屈にプレセッションします。

つまり、前屈の状態というのは、これら「ねじり」と「側屈」のプレセッション・軸が合成された結果生じた状態なのだということです。

イラストを参考にして

軸バランスの調整は、イラストを参考にしてみるとわかると思います。

例えば、単に後屈が不快で前屈が楽だとします。

このとき、

「楽」の前屈位から右ねじり「楽×楽」に、右側屈「楽×楽×楽=快」を組み込むのです。(「楽しく」)

このイラストを見ての最初の疑問は、前屈がベクトルとして表現されていないじゃないか?ということでした。

けれども、前屈は理想的なバランスのベクトルが前方向に、または、左まわりにまわっていることで表現されているのです。ですから、この傾きが一軸目なわけです。

また、人形をつくった方はわかりますが、この前屈のベクトルは丁度すべてのベクトルの交わっている点の部分、軸となっていることもわかります。

一軸目の前屈から、二軸目に「右ねじり」を選択した場合、「右ねじり」のプレセッションの軸は下にのびています。この下にのびた「右ねじり」のベクトルを「快C」の理想的なベクトルに戻すためには、「右側屈」のベクトルに引っ張ってもらえば良いということです。

同じように二軸目に「左ねじり」を選んだ場合、理想的なバランスのベクトル・「快A」にもっていくためには、「左側屈」のベクトルにひっぱってもらいます。

同じように二軸目に「右側屈」を選んだ場合、理想的なバランスのベクトル・「快B」にもっていくために、「左ねじり」のベクトルにひっぱってもらいます。

同じように二軸目に「左側屈」を選んだ場合、理想的なバランスのベクトル・「快D」にもっていくために、「右ねじり」のベクトルにひっぱってもらいます。

三軸の合成

すると、回旋して後屈を不快にしていた軸(a‘とb’)=左ねじりと左側屈の軸のことです

がみずから発生した軸a‘ベクトルと軸b’ベクトルを合成した方向に転換、元の状態に戻るという考え方です。(「楽しく」)

コ~ン先生の十字のベルト

コ~ン先生の「十字のベルト」のひとつは理想的なバランスを示したものです。

もうひとつは、ずれた、歪んだベクトルのベルトです。この歪んだベクトルを理想のベクトルにもどしてあげるように考えるわけです。

むつかしいのは、どのポジションにこの「十字のベルト」をあてるかです。あてる軸は「前・後屈」、「左右側屈」、「左右ねじり」の三つなわけですが、あてた軸は十字のねじれとして表現され、軸には出てきません。残りの表現されている軸で合成していくわけです。

わけが、わからなくなってきましたね。この辺でやめときますね。どうでしょうか?なんとか、理解できましたでしょうか?

まとめ・三軸人形のすすめ

三軸人形を作ってみてください。なんとなくわかっえきますよ~。三軸人形をイメージしながらスム~ズに使えるようになるのは、いつのことやら、、、。まあ、みなさん、やるだけですね~!

三軸操体法の整体

肩こり、というよりも、首のコリがひどい場合には、この「三軸操体法」をメインの施術とさせていただいています。

「三軸操体法」は師匠である今昭宏先生が創案されました。

「三軸修正法」を実践される、池上六朗先生の三軸修正法と操体法を合体させた施術です。

三軸修正法は地球の地軸の動きを応用します。

だって、ほら、地球はまわってるじゃないですか。

すると、回転する地球の上で生活している我々はその影響をうけてるはずじゃないですか。

そこには、磁場も発生してきます。人間は電気で動くロボットですから。

人間の動きには「前ー後」、「右ー左」、「右ねじりー左ねじり」の三軸があります。まあ、操体法的にはさらに「上ー下」もありますから、四軸なんですが、まあ、そこは、こだわらずにいきましょう。

「三軸修正法」はこの三つの方向を組み合わせて「カラダ」を動かしてあげることで、「カラダ」の歪みを矯正していきます。

今先生のスゴイところは、この三軸修正法にさらに、操体法の「快」の原則を加えたことです。

三つの軸のそれぞれの「快」の方向をみつけてあげて、さらにこの三つの軸の「快」を合成するという発想です。

一つの方向で「快」が生まれ、二つ目の方向の動きでまた「快」が生まれ、さらに、三つ目の動きでまたさらに「快」が生まれ、そのとっても「気持ち好い快感」がコリをほぐしてくれるというものです。

「快」×「快」×「快」=快適感覚

けれどもその、実際の動きは微細なもので動かしてるともいえないわずかな動きです。けれども、そのわずかな動きで「カラダ」はほぐれていきます。

「首のコリ」に実際、この「三軸操体法」を行いますと、半数ほどのお客さまは、気持ちが好くなり、眠りにストンと落ちてしまいます。

それほど、この三軸操体法がみつけだすポジションは気持ちが好いということです。眠りに落ちるほど、全身がリラックスして、「首」ばかりか全身がホグれるというわけです。
ですから、この三軸操体法のあと、首を動かしてもらうと、明らかに、その可動域は良くなっています。

「首」・「肩こり」には三軸操体法が特効薬です。気持ち好いですよ~。