
四十肩・五十肩のもうひとつのアプローチ
やはり、四十肩・五十肩の整体というのは、難航するもので、その原因のひとつが、可動域制限をかけている筋肉の特定が難しいという点をあげることができます。
背中を走る広背筋から前腕・指先までのほんのわずかなトリガーポイントが原因となって可動域制限をかけます。
そのトリガーポイントが十人十色、みなさんちがうということです。
ですから、整体やリハビリテーションの本を見て、四十肩・五十肩の整体のポイントは「ここ」みたいに書かれているわけですが、
やってみても、効果がでないのは、自分の技量の不足ばかりではなく、可動域制限をかけているトリガーポイントの多様性もその一因であろうと、思うわけです。
この方の四十肩・五十肩の整体も難航しております。
なかなか、腕を横から上げる動作、外転が上がってきません。
結帯動作はおろか、腕を後ろに伸ばす動作も十分ではありません。
この方の整体に際しては、整体の前に、可動域の検査を欠かさずやるわけです。
腕・肩関節の可動域ばかりか、首の動きも検査します。
すると、この日は、首の左右の横倒しで、可動域制限が出現します。
四十肩・五十肩の整体の前に、この首の可動域制限の整体を進めます。
首の可動域制限については、その原因としては、手・前腕からアプローチするのが定石なわけですが、
最近の私の整体では、
私自身が肩甲挙筋、首の横の筋肉の整体で肩甲骨の内側の痛みから解放されたこともあり、
このことは、以下のレポートを参照してください「肩甲骨の内側が痛くて苦しい」。
肩甲挙筋・首の横の筋肉には、ご来院の方、ほとんどすべての方に触れ、その触診の技術の向上に努めているところです。
この方の首の可動域制限の場合、この肩甲挙筋では不十分で、ふと、その前の筋肉に触れます。
ここです。
ここが何の筋肉なのか、恥ずかしながら、よくわかっていなかったわけです。
良く触れる筋肉でもあり、それなりに効果・変化をだすことができるポジションだとはわかっていたのですが、
その解剖学的な名称がわかりませんでした。
僧帽筋?
肩甲挙筋?
斜角筋群?
いや、いずれもちがう!
鎖骨を肩甲骨とを結ぶポジションを占める筋肉です。
肋骨の胸郭の上に、膜のように位置しています。
やっと、わかりました。
「前鋸筋」です。
ああ~、なんということでしょう、前鋸筋です。
前鋸筋について
前鋸筋についても、かなり触診し、肋骨に付着することから、腋窩から下の前鋸筋については、「剥がし」もずいぶん行ったものです。
そして、それなりに、首の可動域制限を解消することができたものです。
けれども、これまでの前鋸筋のアプローチは腋窩から下の前鋸筋です。
胸郭の上に位置する前鋸筋とは盲点でした。
解剖学の本を見ます。
起始は、第一~第八肋骨とちゃんと書かれています。
第一肋骨は、鎖骨の下に隠れてしまうため、触れにくいのですが、この第一肋骨から
停止は、肩甲骨の上角につながるわけです。
この上の写真のように。
また、背中、後ろからの写真だとこうなります。
解剖学の本には、
「前鋸筋の肩甲骨の上角に終わる筋腹の一部は、棘上筋の前方に存在する」とあります。
そう、棘上筋の「前」に位置しているわけです。
ここの前鋸筋を整体しますと、
首の可動域が改善されたばかりではなく、
肩関節の外転の動きも改善されてきました。
外転20~30度で可動域制限を起こしていた肩関節の可動域が90度をこえ、120度ほどまで改善されてきました。
前鋸筋のはたらき
前鋸筋のはたらき、作用をみてみますと、
肩甲骨の外転と
肩甲骨の上方回旋
とあります。
肩甲骨の外転というのは、
肩甲骨を外側に動かすということです。
これがイメージしにくいのですが、
肩甲骨が外側に動くということは、
肩甲骨は肋骨の後面に張り付くように位置していて、肋骨の後面に沿って動くわけですから、
肩が下がって見えたりします。
肩が下がってみえて、肩関節の亜脱臼のように見える一つの原因となる筋肉です。
また、上方回旋ということは、
肩関節を外転、上腕・腕を横上げする際に作動します。
この前鋸筋が凝って、拘縮してしまうと、
肩は下がって見えたり、腕を横から上げたりする動作に障害がでることは、十分考えられます。
筋肉が固くなって、作動できなくなった状態です。
同じ前鋸筋でも、
腋窩に位置する前鋸筋ばかりではなく、
この第一肋骨に付着する前鋸筋、
胸郭の上部に位置する前鋸筋も整体する必要があるわけです。
これで、この方の四十肩・五十肩の整体にも一条の光がさしてきたように思われます。