強皮症と診断されて

東日本大震災で被災した町、大船渡市からご来院のIさん(30代女性)です。

今回で3回目のご来院です。

忘れたころにふらりと電話をかけてきます。
初めてご来院なさったのはもう今から一年半前にもなります。
ですから、半年に一度のご来院ということです。

一度目のご来院の時は、
「手にしびれ」とひどい肩こりを訴えていました。
地元の整形外科では
「末梢神経障害」との診断でした。

もう何を治療したのかは覚えていませんが、
「足ゆらし」で治療を終えて、ベッドからおりると、
「サングラスをかけなくても蛍光灯の明かりがまぶしくない」
と、言ってくれたことです。

どうやら、自律神経障害もおきていて、
瞳孔がひらきっぱなしになってしまい、光の調節ができなくなり
まぶしくてしかたがないのでサングラスをかけていたのだそうです。
それがうちの治療で瞳孔が動いてくれて、まぶしくなくなったのです。

「嬉しかったな~」

話をきくと、被災はしなかったのですが、
仕事が学校給食で働いていたため、
震災のあとは、毎日、炊き出し、炊き出しで
一日何百、千にちかい数の「おにぎり」を作りつづけていたのだそうです。

熱つ、熱つのごはんを手にして毎日、毎日です。

そんな忙しい日々をおくっているうちに、
手のしびれ感、ひどい肩こりに見舞われるようになったといいます。

震災の被害、影響はこんなところにもでていたのです。

二度目のご来院はそれから半年後です。

どこにいってもよくならないので、今は盛岡の大学病院に通院しているとのことでした。そこで「強皮症」の診断を受けそうです。

「強皮症?」。名前はきいたことはありますが、よくわかりません。
その場でネットで検索したものです。

ウィキペディアにはこうあります。
強皮症(Scleroderma)は、全身の皮膚が硬くなる他、内臓にも病変を発症する原因不明の慢性疾患である。古典的五大膠原病のひとつ。

よくわかりません。
ですから普通の肩こり・腰痛の治療をしたものでした。
大学病院に通いながら、「ああ、あそこの治療がきもちよかったな~」と思いだしてくれて、二度目のご来院となったのだそうです。
三度目の今回は、電話をいただいた段階でもうやるべきことは決めていました。
氷冷却操法です。
全身あちこち痛いそうです。

首の可動域も悪く、
腕も横上げ(外転)は90度もいきません。

まずは、肩こりのための肩上げ操法です。

同行してきたお父さんは半袖Tシャツを着ているにもかかわらず、
Iさんは上着をきています。
「寒いんですか?」
うなずきます。
肌寒さを感じているようです。軽く蒸し暑いのにです。
カラダはほてっています。手も足も熱いのです。
けれども本人は「寒い」のです。

動けばあちこち痛みがでますので、
動きの操法はもうやめにして
さっそく「氷冷却操法」です。
背中から後頚部、さらに後頭部まではダンロップの氷枕。
横の首すじにはタオルでまいた氷。
側頭部、頭頂部はビニール袋氷をじかにつけます。

首の横すじはタオルを一枚まいた氷のほうが、ビニール袋氷より良いようです。
首の横を冷やすのは、脳に行く動脈「総頚動脈」をひやしたいからです。けれどもビニール袋氷をじかにつけると、肌につめたすぎて、すぐに「冷たさ」がでてしまい、冷却にはふさわしくないようです。ですから、タオルでまいた方が長時間脳に冷たい血液を供給できるようです。

頭頚部を氷でガチガチに固めてしまい、あとは、もう、「足ゆらし」です。
それから、足、足首、膝、股関節、骨盤、手、肘、肩、首、頭頂。
手当たり次第に「快高圧」。骨の押し込みをやっていきます。
その程度のことしか、できることは思いつきません。

関節がゆるんでしまったのだから、筋肉が固くなる。
全身の関節がゆるんでしまったのだから全身の筋肉が固くなる。
それが強皮症の正体ではなかろうか?

なぜ、こんなに全身がほてっているのだろうか?

熱い血液が脳に供給されると、脳は熱いと判断してカラダを冷やし始めるはずなのに、なぜ、こんなにほてっているのだろうか?

こんなにほてっているのに、なぜ「肌寒さ」を感じるのだろうか?

熱いと判断しても実はカラダを冷やすのではなく、寒さを感じさせるだけなのだろうか?

ワカラナイ!

けれどもこのほてりが、全身の関節をゆるませている原因にちがいない、と思う。あたためれば、溶けてやわらかくなる。これだけのほてりがあれば、その熱で関節はゆるむにちがいない。

そんなことを考えながら、関節に「快高圧」をかけていくのでありました。

モウイイダロウ!

最後にもう一度、「快高圧・足ゆらし」でオシマイにします。

「あ~気持ちよかった」とIさん。

座位で首の動診をしてみます。

おお!動くじゃないですか!

「首を冷やすと、首が締まって、首の動きが良くなるんですよ」と解説します。

お父さんも、Iさんの表情をみて、「なんか、むくんだ感じがなくなってていい感じじゃないの」といってくれます。

「むつかしい症状で、私ではこんなことしかできないけれども、
頭と首を冷やしてみてください。きっと何かが変わるはずですよ」。

「夜、眠っていると、カラダが痛くなってきて目がさめて、それからはもうあれや、これやで目がさえて眠れなくなるんです」とIさん。

「そんな時は、頭を冷やして下さい。冬眠効果があって眠くなるはずですから。脳ミソの交通整理がうまくできていないんですよ。そのためにも頭と首すじを冷やしてみて下さい。きっと何かが変わるはずですから」。

そう、きっと何かが変わるはずですから!