肩甲骨の内側が痛くて苦しい肩こり

肩甲骨の内側・内側縁の痛みと重苦しさ

肩甲骨の内側・内側縁に痛みが出たり、重苦しさ、息苦しさが出たりした方の症例とその解決方法をレポートします。

この肩甲骨の内側・内側縁の症状も一般的には「肩こり」の症状としてカテゴリー分けされています。

このレポートでは、三人の方の症状をとりあげます。三人目は私本人の体験記となります。

三人に共通しているのは、前かがみ・前屈の動作・姿勢を長時間続けているという点です。

前かがみ・前屈といっても、体幹の前屈から頸椎の前屈まで様々です。動作・姿勢の違いをイメージしながら読み進めてみて下さい。

工場で働いてる方の症例

工場で働いてる方です。仕事の部署が変わったとたんに、背中が苦しくなってしまったそうです。

工場での作業の姿勢を聞いてみますと、「前かがみの作業が続いてるせいだと思います」と本人にも原因に心当たりがあるようです。

体幹を前かがみにして下を向いての作業が続けば、背中はストレッチ・伸ばされた状態になるため、それを背中の筋肉、また肩甲骨の間にある筋肉はもとの姿勢に戻そうとして筋肉は収縮し続けます。そこから筋肉疲労・「コリ・ファシア」の形成ということになります

特に、背中というより、左右の肩甲骨の間が痛いような、苦しいような感じがとれない、ということです。

背中の苦しさの原因はお腹です

背中の苦しさを訴えているので、まず、背中、肩甲骨の間を触れてみますと、やはりパンパンにはっています。筋肉の「ハリ」の場合は、わたしは筋肉が引っ張られている状態であると考えております。

背中の苦しさを訴えているのですが、念のために肩関節・首関節・上腕の動診をしてみますが、肩関節も首も、結帯動作も下肢の動診である左右の膝倒しも動きは上々で違和感はほとんどありません。

けれども、うつ伏せになってもらい、足を伸展、上にあげてもらいますと、これが上がりません。

この足の伸展の可動域制限を解消してあげると、背中のコリも楽になるにちがいない、と判断して施術にはいります。

これは、もう、狙うべきところは決まっています。

「お腹」です。

外腹斜筋と内腹斜筋を整体します。これは「正解」です。軽くお腹に触れただけで、その固さがわかります。

外腹斜筋と内腹斜筋を軽く触れただけで、身をよじって痛がります。お手やわらかに、お腹を筋膜リリースしていきます。お手やわらかにお腹を筋膜リリースしても、これだけ筋肉が凝ってしまうとどうしても痛みがともないます。

お腹を筋膜リリースすると背中もやわらかくなる

うつ伏せで、足があがるようになるまで、丁寧に丁寧にお腹を整体します。

足の挙上、伸展が改善したところで、背中、肩甲骨の間に触れてみます。これは、もう大成功です。パンパンにはっていた、背中、肩甲骨の間がそれは、もう、フワフワになっています。こうなると背中から肩甲骨の間の苦しい感じは解消されています。

本人も、「いつも驚くんですが、今回はお腹ですか~!」と喜んでもらえました施術となりました。

この方の症例のまとめ

この方の症状は、工場の部署が変わったことで、体幹を前屈して働く作業が増えてしまいました。体幹を前屈する筋肉はお腹の筋肉である外腹斜筋と内腹斜筋です。このお腹の筋肉群が常に作動することになりきんにくが凝り固まってしまいました。筋肉が凝り固まるということは筋肉が縮むということですから、背中は逆に常に引っ張られる、テンションがかかり続けることになります。テンションがかかるのでそれを元に戻そうとして、背中の筋肉群・肩甲骨の間の筋肉群は作動しつづけます。このようにして肩甲骨の間・肩甲骨の内側縁に重苦しさ、息苦しさが生じていたと考えられます。そして、この重苦しさを解決するためには、背中・肩甲骨の間の筋肉を施術するのではなく、お腹の筋肉群をリリースすることがその解決方法だということです。

お医者さんの症例

肩甲骨の内側に痛みが出るということで、お医者さんにご来院いただきました。

お医者さんにご来院いただくと、やはり、ちょっと緊張してしまいます。心がけたことは、「あまり余計なことはしないことにしよう」ということでした。やりすぎ、施術のし過ぎよりは、物足りなくて、下手くそだと思われたとしても、そのほうがいいな、と心にきめました。

右の肩甲骨の内側に痛みが走ります

右の肩甲骨の内側に痛みが出るようになったというのがこの方が訴える症状です。

お仕事をして診察を続けていると、仕事の途中で右の肩甲骨の内側が痛くなってくるのだそうです。

<肩甲骨の内側縁>


聞けば、毎日、大変忙しくお仕事をしていて、昼休み時間は2時間確保しているけれども、実際は休憩時間もなく、ぶっ通しで10時間も働く毎日だということです。

「そんな毎日がもう4~5年続いています」ということです。

近くの整形外科を受診して、レントゲンとMRIの検査をしてもらったそうですが、「頸椎ヘルニアっぽいけれども、極端にでているわけではない」という診断だったそうです。

動診してみます

初診の方にやるように、腰から肩、首まですべての動きを動診してみます。

けれども、残念なことに、極端な可動域制限はみられないわけです。

唯一、首を左に側屈しますと、右の首筋に軽くハリが出る程度です。結帯動作にいたっては、もう完璧な動きをみせます。

可動域制限を解消することを得意としている私としては、これは、ちょっと困ってしまうわけです。なぜなら筋肉のコリの問題ではない可能性が高いからです。

首の動診の際、軽く頭に手を触れることになるわけですが、その時の熱感、「ほてり」が気になりました。

これいってみよう!そう決めました。頭の「氷冷却操法」です。

お医者さんを相手に「氷冷却か~」と思いながら、、、。

もっと、派手なパフォーマンスの、カッコいい整体をしたかったんですが仕方ありません。体の動き、動診では、私には異常をみつけることができなかったのですから。

頭を氷で冷やします

後頭部には「氷枕」をあて、側頭部は、ラップ袋にいれた氷で頭を冷やしていきます。

「頭を冷やして気持ちいいですか?冷たいですか?」と聞いてみます。

「気持ちいいです」という答えがかえってきます。

「頭の奥まで冷えたな~という感じになるまで冷やし続けますよ。冷たくなったら教えて下さい。長い人ですと、5分も10分もかかりますから、ゆっくり横になって、眠ってしまってもいいですから、休んでいてください」。

予想通り、かなり時間がかかります。

10分はかかりました。

さらには、側頭部が冷えてきたということでしたので、頸椎および頸動脈をねらって首の側面を冷やしていきます。

その間、黙っていても仕方がないので、首の側屈で軽く違和感がでましたので、お腹の筋肉のコリからくる首の軽い可動域制限を想定してお腹の筋膜リリースを行います。

「こんなに頭がほてっていたのでは、夜の眠りも浅いんじゃないですか?頭を冷やしてから眠ると、ぐっすり眠ることができますよ」と伝えながら。

聞くともなく、尋ねてみますと、なんと「心療内科」の先生です。

あらあら、心療内科の先生の頭を冷やしてあげてるのか、と、なんとも不思議な気持ちになりながら、、、。

施術はこの頭の冷却だけで終了です

施術したことは頭を氷で冷やすだけでお終いです。けれども時間的にはかなり要しました。

施術を終え、施術のポイント、わたしが考えたことをまとめて説明している間くらいの短い時間を座ってもらう程度であれば、肩甲骨の内側に痛みはでません。

長時間、診察で坐つていると痛みが出てくるということでしたので、いまここでの痛みの再現はできません。

あとは、日常の診察にもどって、肩甲骨の内側・内側縁に痛みが出るかどうか、ということです。

「日常のお仕事が忙しすぎて、頭がすっかり、ほてって、のぼせてるんじゃないですかね。頭から首が熱をもってしまって、熱をもつと関節はゆるんで歪んでしまいますから、頸椎そのほかの関節がゆるんでしまい、それを支えるために、背中に負担がかかり痛みが出てるんじゃないですか?頭と首筋を冷やしてみましたので、何かが変わると思いますよ」と私の見解を伝えます。

「日常生活でも、頭を冷やすのは有効だと思いますよ」とも伝えます。

この方の症例のまとめ

肩甲骨の内側・内側縁の痛みを訴えてご来院いただいたのですが、動きの検査で不具合が認められなかったので、頭の熱感を冷やす施術を行いました。効果があったか、その痛みが解消されたかは、再来院なさらなかったのでわかりません。頭を冷やし、頸部を冷やすことはそれなりに有効であったろうと思います。ただ、つぎの症例である私自身の体験を踏まえてみると、首筋の筋肉のコリや、または指のコリまでもう少々気を配ってもよかったのではなかろうか?といまでも少々反省している整体となりました。

わたしの症例・肩甲骨の内側が痛くて夜、目が覚める

わたし自身の肩甲骨の痛みの体験レポートです。

肩甲骨の内側・内側縁が痛くて、夜、眠っていると目が覚めてしまうのです。

この症状にずいぶん悩まされましたが、なんとか自力で克服することができましたので、わたし自身の体験レポートを記してみます。

この症状、夜、眠っていると、肩甲骨の内側が痛くて、息苦しくて、目が覚めるという症状に悩まされておりました。もう三か月も!

起きて仕事をしている時には、気にはならないのですが、夜眠ってしばらく時間が経過すると、肩甲骨の内側・内側縁が痛くなり、その痛みで目が覚めてしまいます。

そんな期間がもう何か月も続き、「自分でなんとか解決しなくちゃ」と思い、いろいろ人体実験・試行錯誤してまいりました。

痛みが出て、苦しかったのは、ここです。

<肩甲骨の内側縁>


この写真は、右の肩甲骨の内側縁のガイコツ君の写真ですが、実際には左の肩甲骨の内側・内側縁が痛くて苦しかったわけです。

また、自分でも、ここ、

<大菱形筋周辺部>


大菱形筋周辺に「ハリ」を感じておりました。大菱形筋周辺に「ハリ」が出現しているということは、何らかの原因で肩甲骨が外方、外側に引っ張られている力がかかっていることを示しています。

肩甲骨が「外転」してしまっているんだな、とは理解することができました。

その外力・外に引っ張っている原因となっている筋肉が何なのかが、われながら、特定できずにずいぶんと、この夜眠っていると肩甲骨の内側縁の痛みで目が覚める症状に悩まされていました。

肩甲骨の内側の痛みですから、いわゆる、「肩こり」といってしまえば、それまでですが、肩こりの原因の多くは、「手」の使い過ぎからくることが多いため、まず、狙うポイントは「手」・前腕・上腕ということになります。

「身体運動の機能解剖」(医道の日本社)を参照すると、肩甲骨を「外転」する筋肉は「前鋸筋」と「小胸筋」とあります。

「手」・前腕・上腕と「前鋸筋」と「小胸筋」との筋肉の連結を考えながら、手・前腕を中心に自分で筋膜リリースを進めました。

きっと、この肩甲骨の内側縁の痛みのトリガーポイントは手・前腕にあるにちがいないと確信しながら。

<左の肩甲骨の内側縁>


肩こりというより、背中の痛み、肩甲骨の内側縁の痛みといえます。

痛みが出た時、苦しい時は、どのような体勢をとれば、その痛みが消失、減少するか、痛みが消える楽な姿勢を探すのが鉄則といえます。

探してみます。

左の腕を内旋したり、外旋したり。

横に広げて(外転)みたり、逆にお腹の方にもっていったり(内転)

腕をあげてみたり。

けれども、残念なことに背中・肩甲骨の痛い・苦しい感じはおさまりません。

痛みが減少する体勢はみつかりません。

肩甲骨の内側・内側縁が痛くて目が覚めてしまい仕方がないので、ベッドから起きだして、この痛みが消えるトリガーポイントを探すことにしてみます。

肩こりの鉄則は前腕です

肩こり・背中のこり、いわゆる上肢を整体する場合の鉄則は、まず前腕のトリガーポイントを探っていくことだ、と私は考えています。

前腕を触診していきます。

自分の前腕というのは、なかなかわかりずらいものです。

うまく前腕のコリ・トリガーポイントを見つけることが出来ません。

仕方がないので、前腕全体を「しらみつぶしに」筋膜リリースしていきます。けれども肩甲骨の内側の痛・苦しい感じに変化は感じられません。

さらに探っていきます。

手です。

手を触診していくと、いわゆる「合谷」にコリを認めます。

<合谷>


合谷の筋膜を剥がしていきます。

合谷といってもその範囲はひろくて、私がコリを認めたのは、第二指の中手骨の骨のきわです。

筋肉的には「第一背側骨間筋」となります。

こんな動作、

<拇指と人差し指とでつまむ動作>


拇指と人差し指とで、つまむ、にぎる動作をしますと、

この「第一背側骨間筋」が作動するのか、ストレッチがかかるのか、ムクムクと動くことがわかります。

こんな動作の手・指のつかいすぎが、肩甲骨の内側にまで痛み・苦しさを誘発していると想定します。

なんとなく、肩甲骨の内側が楽になってきたように感じられます。

合谷について

けれども、この合谷のコリ・トリガーポイントが原因で、肩甲骨の内側にまで痛み・苦しさを誘発している、とは簡単に判断はできにくそうです。

と、いうのも合谷というポイントは、痛みを消す効果、鎮痛作用のあるツボとして知られているからです。

中国では、合谷に鍼を打ちながら、歯の抜歯をするのは、よく知られています。この肩甲骨の内側の重苦しい痛みがなんとなく楽になった感じというのは、「コリ・ファシア」が消失したからかもしれませんし、ただ単に痛みを鎮痛したせいかもしれません。

けれども、どうやら、この合谷は「本丸」ではなさそうです。合谷の筋膜リリースを続けても、この肩甲骨の内側の痛みが回復してこないからです。症状が軽減するかどうかで検証していくしかありません。

首のコリを指摘される

なかなか自力では、肩甲骨の内側の痛みを改善することができないので、整体の勉強会・セミナーに参加した際には、自分のこの症状を訴え、進んで整体のモデルになり、助言を求めたりしたものです。

けれども、なかなか上手くいかない、効果がでません。整体の達人先生もお手上げのようです。

やはり、最後に頼りになるのは、私の学び家である仙台操体医学院です。

このような症状を訴え、治療を受けさせてもらいます。

私の首に触れながら、「ここがカチカチにこっていますよ」と今貴史先生と今昭宏先生に指摘していただきました。

私のこの肩甲骨の内側の痛みの原因は、手ではなく「首」だったのか~!

確かに、自分ではこの首にはアプローチしてきていません。

また、なぜ、首の筋肉がコルと肩甲骨の内側縁に痛みがでるのか、そのメカニズムが理解できませんでした。

けれども、仙台操体医学院での講習会から帰り、自分で首の筋肉に触れていくと、確かに肩甲骨の内側の痛みは軽減されていく実感がありました。

おかげさまで、いまでは、もう、ほとんどその痛みもありませんし、夜眠っていても、その痛みで目覚めるようなこともなくなりました。

肩甲骨の内側に痛みが出現するメカニズム

この首の筋肉を自分で筋膜リリースしながら、解剖学・運動学的を基に私なりに考えていくと、「あ~、そんなことか!」と理解することができました。

触れている筋肉はここです。

<肩甲挙筋>


「肩甲挙筋」です。

肩甲挙筋は、第一~第四頸椎の横突起の後結節にはじまり、肩甲骨の内側縁の上三分の一の領域に終わります。

この停止部の肩甲骨の内側縁の上三分の一というのが、ちょっとしたポイントです。

これまで、単純に、肩甲挙筋は肩甲骨の「上角」に付着すると思い込んでおりました。「上角」に付着するから、その作用は肩甲骨を挙上するんだな、と。

ところが、その作用は、まだ、あります。そのことを記述していない解剖学の本もありますが、、、。肩甲骨を下方回旋させます。

<肩甲骨の下方回旋>


肩甲骨が下方回旋しますと、ちょうど、大菱形筋が外側に引っ張られることになります。

そのために、大菱形筋付近にハリが出現していたと考えられます。

また、それにともない、肩甲骨の内側が外に引っ張られ、テンションがかかっていたということです。

これが、肩甲骨の内側に痛みが出現するメカニズムだと理解することができました。

なぜ肩甲挙筋がコルのか?

それでは、なぜ、肩甲挙筋がコルことになったのか、そのことを考えてみましょう。

肩甲挙筋の作用は、いま記したように「肩甲骨の挙上と肩甲骨の下方回旋」です。

普通、筋肉がコル場合その筋肉の使い過ぎからくることが多いものです。

けれども、肩甲挙筋のこのような動作、肩甲骨を挙上する動作は、あまり私はしていないわけです。

これは、肩甲挙筋の作用から考えるより、その位置・ポジションから考える方が適切なようです。

肩甲挙筋は頸椎の横突起の後面と肩甲骨を結びますから、下を向く動作で、常に、ストレッチ・テンションがかかる状態が出現します。

下を向くことで、この肩甲挙筋がひきのばされ、それを元のポジションに戻そうとして筋肉が作動しつづけ「コリ・ファシア」が形成されたにちがいありません。

そのことから、肩甲挙筋が常に引っ張られ、最終的には、肩甲骨の内側縁に痛みを発生させていたと考えます。

ですから、その施術はこの肩甲挙筋の起始部である頸椎の横突起を「筋膜・骨膜リリース」することが有効であることが理解できます。

またそこから下方にのびる肩甲挙筋の筋腹を筋膜リリースすることが施術の狙いとなります。

触れてみますと、この横突起の起始部も、また、首の付け根のこの肩甲挙筋の筋腹もガチガチに固くなっていることがわかります。

この肩甲挙筋を整体することで、私の肩甲骨の内側の痛みは解消されることとなりました。

この3つの臨床レポートのまとめ

この3つの臨床レポートでは、共通して言えることは、前かがみ、体幹および頸椎の前屈が原因となっているということです。体幹の前屈によりお腹の筋肉群が凝り固まったのが、第一番目の工場で働く方の症例です。二番目と三番目のお医者さんとわたしの症例では、頸椎の前屈が原因で首の筋肉が凝り固まったことから肩甲骨の内側・内側縁に痛みが出現していたと考えられます。二番目のお医者さんの症例では、頭を冷やすことしかしませんでしたが、わたしと同じように首の筋肉、肩甲挙筋のコリであった可能性が高かったかと、いまは考えております。このように肩甲骨の内側・内側縁に痛みや重苦しい感じを訴える患者さんがご来院した際には、お腹の筋肉群、また首の筋肉・肩甲挙筋へのアプローチ、「筋膜・骨膜リリース」は有効な施術になるものと思われます。みなさまの参考になれば幸いです。