腰痛と猫背の関係について
腰痛と猫背の関係についての症例、レポートです。
腰が痛い。体をねじると腰に痛みが出ます。
この方は一か月に一度、腰が痛くて体のメンテナンスのために通院していただいているのですが、
ご来院のときの背中の状態は、上の写真の具合です。こんなにも、背中が後弯(こうわん)、後ろに反りかえっています。
この状態では、体をねじる動作を動いてもらっても、腰に痛みが出ます。背骨がこれほどまでに後弯していたのでは、体をねじる動作の際、背骨もねじれるのですから、スムーズに背骨がねじれるはずがありません。背骨の動きをこの背骨の後弯がブロックしていると考えることができます。
仰向けになってもらって、両膝をたて、左右に倒してもらいますと、もう、腰に痛みが出てほとんど動かすことができません。腰といっても、痛みを訴える部位は、背骨と骨盤のジョイントする部分、腰仙関節です。
この膝倒し、体をねじる動作は、股関節の動きのほかに、体幹、背骨のねじりも加わってきます。ですから、股関節の動診や体幹の動診により可動域制限をおこしている部位を特定していくことになります。
背骨がこれだけ後弯しているとなれば、その歪みは、背骨だけでなく、腰の動きにも影響が出てくるに違いありません。
カパンディの腰椎の回旋の解説
カパンディの腰椎の回旋についての解説を参照してみます。
GregersenとD.B.Lucasによれば、腰椎の総軸回旋は両側に合計10度の可動域をもつといわれているので、一分節は両側に合計2度、一側に1度の可動域をもつことになる。
ひとつの腰椎は右に1度、左に1度ねじることができる、ということです。ですから体幹のねじりの動作には腰椎は実はあまり関与していないことになります。けれどもこの1度の動きが十分にできないのであれば、体幹のねじりの動作に可動域制限が出現すると考えることは不自然ではありません。十分考えられることです。
ですから、背骨、脊柱を整える施術から始めます。
背骨、脊柱を整える
素直に、背中および、背骨を整えていきます。ここまで、平らになってきます。
すると、仰向けになってもらい両膝を左右に倒す体をねじる動作をしてもらうと、腰痛はやはり大分、軽減してきます。
このことからも、背骨の後弯、いわゆる猫背になると腰痛、背骨と仙骨との関節部、腰仙関節の痛みが軽減することが明らかとなります。
この方、身長が180センチほどあり、仕事がクレーン車のオペレーターをやっています。狭いクレーン車の運転席で前かがみになり体を小さくして仕事をしている情景が目にうかびます。このような、日常動作のクセがこの猫背をひきおこしてしまい、さらには、腰痛までもひきおこしてしまっているに違いありません。これも、まさに職業病といえます。仕事とはいえ、なんとも、むごい話です。休憩時間にひとりでできる姿勢改善のための体操も指導するのですが、それだけでは、なんともならないのが実情のようです。
うつ伏せで体をねじってもらいます
こんな動診をしてみます。うつ伏せになってもらい、両膝をまげ、その姿勢から両膝を左右に倒してもらいます。
ところが、もう、腰に痛みがでて、両膝を右にも、左にも倒すことができません。背中の後弯(こうわん)、後ろに反りかえると、こんなにも、むごいことになります。仰向けの場合とはまたちがって、うつ伏せで両膝を左右に倒したほうが、仰向けの姿勢よりも負荷がかかるようです。
もう一度、さらに吟味してこの背中、脊柱に骨の並びを整える施術をしていきますと、この両膝が左右に倒せるようになっていきます。
ところが、今回、まだ、この動診の最後のところ、左右に両膝を深くたおすと、腰仙関節に痛みがでます。背骨・脊柱への施術だけではまだ何かが足りないようです。
お腹の筋肉群を整体する
それで、ふと、「お腹」に触れてみますと、お腹の筋肉がもう、カチカチに固くなっていることがわかりました。長身を折り曲げて仕事をしているのですから、体幹を前屈・前かがみにするわけです。すると、お腹の筋肉群が常に作動し続けることになります。
このお腹の筋肉群をリリースするために、骨盤まわりにアプローチします。 腸骨稜の外側、外腹斜筋の付着部、停止部を筋膜リリースしていきます。触れただけで、顔をゆがめます。かなりの痛みを伴うことがわかります。痛みが出ない程度にソフトに筋膜リリースをしていきます。
すると、両膝を倒す動作が、ずいぶん楽になります。
このレポートのまとめ
お腹の筋肉群は「体幹を前屈する」作用があります。前かがみで作業をするということは、このお腹の筋肉群が作動し続けるということです。猫背になってしまうのもこのお腹の筋肉群が収縮してしまったからだと推察されます。お腹の筋肉群が収縮することで背骨・脊柱の歪みを引き起こしてしまうということです。ですから、結果にすぎない背骨の歪みだけを整える施術だけをおこなっても根本からの改善にはならないということです。結果である背骨の歪みを整えながら、その原因であるお腹の筋肉群の筋膜リリースも施す必要があるということです。