藤木大地を耳にしたのは、たまたま偶然のことだった。
私はもう長い間、テレビをもたない生活を続けているのだけれど、
そのかわり、NHKのFMラジオを聞き流している。
朝には、「古楽の楽しみ」を、夕べには「ベスト・オブ・クラッシック」を。
たまたま、いつものように、お酒を飲みながら、「ベスト・オブ・クラッシック」を聞くともなく、聞き流していると、
聞いたことのない名前のカウンター・テナーの歌がきこえてきた。
2017年5月30日のことだ。
はじめは、「ふ~ん」みたいな感じで、なんとなく聞き流していた。
ところが、
石川啄木の詩につけた「初恋」
つづく、立原道造の詩「夢みたものは」を耳にすると、
「こいつは何者なんだろう?ただものではないな」という思いがわいてきた。
ラジオのボリュームを高くして聴き始めた。
後半はもう、圧巻としかいいようがなかった。
武満徹作曲・谷川俊太郎作詞の「死んだ男の残したものは」。
R・シュトラウスの美しい歌曲がつづく。
「万霊節」と「あすの朝」。
いずれも吉田秀和の本を手にしながら、聴き知った美しい曲。
そして、再び、武満徹の「小さな空」。
最後は、ブラームスではなく加藤昌則作曲の「こもりうた」。
なんとも、夢見るような素敵な歌曲のプログラムの構成だった。
次の日、私は、藤木大地を検索し、藤木大地のCDを注文していた。
このCDがまた素晴らしい。
演奏者も素晴らしいが、この日本の録音技術の素晴らしさはどうだ!
「くちなし」(作曲・高田三郎/作詞・高野喜久雄)にうちのめされ、
とうとう、くちなしの花、花木を注文してしまったほどだ。
藤木大地のために、加藤昌則が作曲した「てがみ」もすばらしい。
この曲は、「ベスト・オブ・クラッシック」のコンサートが初演となった曲。
「どうしていますか」はもう口ぐせとなってしまった。
ああ、素晴らしい!
もういちど、R・シュトラウスの歌曲を聴きたい。
シューベルトはどうだろう?
シューベルトの「水車小屋」をペーター・シュライヤーのようにギター伴奏で歌ってはもらえないか。
ああ、素晴らしい!
私は、もうできるかぎり、藤木大地のコンサートに出かけることに決めた!
はるばる岩手県から!
藤木大地の歌をみなさまに。
音楽を愛するみなさまに!