グリアは神経細胞の接着剤
「もうひとつの脳」というこの本がとても面白いわけです。
ということで、自分の理解を確実なものにするためにも、ポイントを要約していこうと思いついたわけです。
この本の著者・フィールズという方は、文才もあるにちがいなくて、文句なく面白い。
わかりやすく、なおかつ面白く読ませてくれます。
もうまるで、サイエンス・ノンフィクションです。
話の展開の仕方が、本当にうまくて、面白いわけです。
この第一章では、グリアについての解説です。
軸索とグリアの歴史について説明されます。
また、天才物理学者・アインシュタインの脳はグリアが多かったことを語ります。
「グリアが精神機能に関与しているかもしれないという推察は、大部分の神経学者の概念的枠組みから大きく外れていた。
その名前自体が、一世紀にわたってこの概念的枠組みを閉ざしてきたのだと言える。
なにしろ、神経膠細胞(neuroglia)というその名は、ラテン語で「神経細胞の接着剤」を意味するのだ」。
グリアが神経細胞の軸索を包むだけのただの接着剤にすぎないという、なかば定説になってだれも疑いをさしはさまなくなってしまった、このことを、検証しようというのだ。
ニューロンが発火するたびに細胞がぱっと輝く
「私は後根神経節(DRG)ニューロンをいくつかの溶液にくぐらせて、クラゲから抽出したタンパク質によく似た合成カルシウム感受性蛍光色素を細胞内に取り込ませる処理をしていた。
このニューロンは白金電極を装着した培養皿で生育させていたので、弱い電気ショックを与えて、インパルスを発火させることができた。
ニューロンが発火するたびに、カルシウムイオンが細胞に流れ込んで蛍光色素と結合し、その細胞がぱっと輝く」ように処理します。
そして、今回の実験では、後根神経節ニューロンのほかにも、グリア細胞を培養に加えるよう指示した。
そう、グリア細胞が発火してインパルスを出すかどうかを実験したわけです。
「神経インパルスを伝えるのは軸索だけだ。
グリア細胞はこれまで、導線に巻かれたプラスチック被膜のように軸索を絶縁しているものの、軸索を流れるインパルス活動は感知できないと推定されてきた。
私たちはこの推定を検証したいと考えていた」。
グリア細胞は軸索を流れるインパルスを感知できないのだろうか?
これまでの常識では、グリア細胞はただの接着剤ですから、インパルスを感知できるはずはありません。
数か月の準備後
「数か月の準備を経て、科学者なら誰もが待ち望む瞬間がついに訪れた」。
「私がスイッチを入れてニューロンを刺激した瞬間、それらのニューロンは青から緑、そして赤、白へと変わり、細胞質にカルシウムがどっと流入したことがわかった。
シュワン細胞(グリア細胞)は、電気的インパルスを発火することも、軸索に発火を引き起こしている微弱な電気ショックを感知することもできずに、青色のままだった。
失意のなか、15秒ほどが過ぎただろうか。
突如としてシュワン細胞がクリスマスツリーのように明るく光り始め、ベス(彼の助手)と私の気分は一気に高揚した。
目の前のグリア細胞は、神経軸索のインパルス発火を何らかの方法で感知し、それに反応して細胞体内のカルシウム濃度を上昇させたのだ。
グリアは長年、脳を取り巻く梱包材にすぎないと見なされてきたが、ニューロン間でやりとりされる情報に関係していた。」
このことが、この実験で明らかにされたわけです。
なんとも、劇的な逆転劇です。
そして、やはり、常識とされてきたことを今一度疑ってみることの大切さを改めておもいしらされますね。