股関節・鼠蹊部の痛み
股関節の痛みに悩まされている方も、これまた多いものです。
私のような、所詮、「はり師・きゅう師」の資格で、整体を営んでいる者にとっては、
股関節そのものの治療は、不可能、できないわけです。
変形性股関節症の診断を受け、本当に、股関節の関節の中、関節包の中で問題が起きているケースは、私では、なんともできないことです。
やはり整形外科の先生にお任せするしかありません。
たかが整体屋の限界です。
けれども、整形外科の診断では、変形性股関節症であっても、その股関節の痛みを解消することができることも、また事実としてこれまで何度も経験してきました。
股関節そのものが壊れてしまった場合は、整体屋ではなんともなりませんが、股関節以外のポイント、股関節以外のトリガーポイントが原因で股関節に痛みを誘発している場合には、なんとか対応できるケースもあるものです。
そういったケースでは、整体屋の出番となるわけです。
この方は、股関節といっても、内側、鼠蹊部に痛みがでるケースです。
股関節を開くと痛みが出ます
左のお尻から股関節の内側、鼠蹊部に違和感があり、動診してみますと、股関節を開く動作で、股関節の痛みを再現することができます。
仰向けになってもらい、左膝を立て(股関節屈曲と膝関節90度屈曲です)、内側に倒したり、外側に倒したりしてもらいます。
すると、膝を外に倒すと、股関節の内側に痛み、違和感が出現します。
この膝倒しの動診は、私が学んでいる操体法では、欠かせない動診のひとつです。
この膝倒しの動作、動きとしては単純な動作で、だれでもできる動作なわけですが、
この動作を解剖学的・運動学的に記すとなると、これは結構、やっかいで、むつかしいものです。
股関節の外旋、外ねじりともいえますが、
そればかりではなく、股関節を外に開く動作、外転の動きも混じっているようです。
外旋と外転との合成動作が、この膝倒しの動診と言えそうです。
この膝倒しの動作で、可動域制限と痛みが出るわけですから、
素直に考えれば、その反対の動作、股関節の内旋と内転する筋肉群のコリ・拘縮が原因と考えます。
またそのポジションから、大腿の内側に位置する筋肉群れも念頭に置きます。
ですから、内転筋・半腱様筋・半膜様筋・大腰筋・腸骨筋のコリは想定しなくてはなりません。
これらの筋肉群れに触れ、整体し、
さらに、大腰筋を想定して、その走行上のお腹を按腹していきます。
その成果は、まあまあ、といったところです。
体は全身がねじれていく
こんなことを、いまさらながら、最近考えながら整体しております。
ひとつのポイントに痛みが出ている場合、そのポイントも確かにねじれている、歪んでいるにちがいない。
けれども、その一か所のポイントばかりではなく、全身が同じようにねじれているにちがいない。
痛みをだしているポイント以外のねじれが原因で、その痛みをだしているポイントがねじれているのかもしれない、ということです。
この方、左の股関節を外旋・外転すると痛みがでるということは、全身がその反対方向にねじれているにちがいないということです。
左の股関節も内旋・内転位にねじれているのでしょう。
また体幹も右にねじれているのでしょう。
そして、右の腕も右にねじれているのでしょう。
右の腕が右にねじれているということは、上腕であれば、外旋、前腕であれば回外にねじれているということです。
上腕二頭筋のはたらき
上腕二頭筋は大きくて、分かりやすい、有名な筋肉です。
そう、力こぶの筋肉です。
触れることも容易です。
解剖学の本をひもときますと、
その作用は、
肘関節の屈曲
前腕部の回外
とあります。
そう、肘を曲げるだけではなく、前腕を回外、外にねじっていきます。
すると、この上腕二頭筋を使いすぎて、コリができてしまうと、
前腕を外にねじるばかりではなく、全身を外にねじっていく力が発生するにちがいありません。
すると、その逆の動きをする際に、可動域制限を引き起こす原因の一つになるに違いありません。
ですから、左膝の外倒し、左股関節の外旋・外転の可動域制限を引き起こしてもおかしくはありません。
そういう想定です。
それでは、この左の股関節の外倒し、左股関節の外旋・外転で股関節に痛みと違和感のでるこの方の、
右腕の上腕二頭筋を整体します。
筋腹をたどり、上腕二頭筋の停止腱をさかのぼり、その停止部である、橈骨粗面までを整体します。
それでは、ビフォーアフターの動診です。
左の股関節を開いてもらいます。
「あら?痛くない」
そんな答えが返ってきました。
「え~?どうしてこんなことがおきるの?」と不思議そうです。
そこで、上に記したような、体全体のメカニズムを解説します。
こんなことが起きてしまいます。
すると、この解剖学用語というのは、実は、たくさんの問題解決のヒントがつまっていることもわかってきました。
このこともまた別の論考で展開していきたいと考えております。