骨盤の周辺が重だるい
女性の獣医師・Yさんです。
黙っていても骨盤・左の腸骨稜の周辺に重だるい感じがあってスッキリしない、と言います。
こういう症状の訴えはなかなかやっかいです。痛みがあるわけでもなく、「重だるい」という曖昧な表現の症状です。
しっかり、その症状を浮き彫りにしていくことが大切になってきます。
立位での動診をします。
左右のねじり、左右の側屈とも良好です。前屈も手のひらが床につくほど柔軟です。
唯一、体幹の後屈の際、訴えている、「左の腸骨稜」周辺に違和感がでるようです。
仰向けになると骨盤・腰に違和感が出ます
ベッドに仰向けになってもらいます。
「あっ、これが苦しい。足を伸ばすと、そこのところが苦しい。
夜も仰向けでは寝れずに横向きなって寝ています」といいます。
これで、やるべきことが明瞭になったわけです。
仰向けになってもらって、窮屈感・違和感がでなくなるようにすれば、患者さんに満足していただけるわけです。
「重いだるい」という曖昧な症状から、仰向けに足を伸ばして寝ても違和感のない状態にしてあげること。
これです。
足を伸ばすのはつらいので、両膝を立ててもらいます。
両膝倒しの動診をしてみます。左右の膝倒しともあまり違和感はでてきません。
そこで、片膝づつ外方に倒してみます。
左の膝倒しが明らかに動きが渋く、可動域もあまり良くありません。
Yさんもそのことに気づいて「オヤ?」という表情をみせます。
考えられることは、左の股関節または、仙腸関節の歪みのせいで、左の腸骨稜の周辺に重だるい感じがでているのではなかろうか?ということです。
選ぶ操法はそのものズバリ。
骨盤矯正・三軸操体法です。
骨盤矯正・三軸操体法
片膝を倒した姿勢からの骨盤矯正・三軸操体法です。
先程の動診から明らかなように、左膝は外に倒しずらく、右膝は良好です。
また、股関節の屈曲の動診もしてみます。
左の股関節の動きのにぶさが伝わってきます。
ですから、動きやすい「右膝」を外方に倒します。
倒した右足の踵で添えている私の右手を踏んできてもらいます。
けれどもこの動作は、はじめての方にはなかなかむつかしい動きなので、私はこんなふうに誘導しています。
「右足の膝と踵で私の手をゆっくり押すように、踏んできてください」
一回目はただ踏み込んでもらいます。
それでも十分軽く骨盤が浮いたり、腰がかすかに動いたりする動きがでてきます。
股関節や仙腸関節に「圧」がかかっているイメージがつかめればそれでOKにしています。
もう一度踏み込んでもらいます。
今度は踏み込んでもらいながら、右肩を足方に下げてもらったり(体幹の右側屈)、左肩を足方にさげてもらったり(体幹の左側屈)して、動きの楽な方を聞いてみます。
「左の方が動きやすいです」
そのまま、左肩を下げてもらいながら、骨盤および腰を軽く反らしてもらいます。
三軸の動きを合成する練習です。
「右ねじりー左側屈ー後屈」です。
二回目は患者さんにこの動きを覚えてもらうための予行練習です。
それでは、三回目、三軸の本番です。
一軸目で右足の踵を踏み込んでもらいー二軸ー三軸とスムースに合成していきます。
三軸目の後屈の動きにそっと腰に介助の手を添え、反らす動きを手助けすることもあります。
これが骨盤矯正・三軸操体法です。
これにちょっと小技をたしてみます。
右膝を倒しながら踵を踏み込む一軸目(右ねじり)-二軸(左側屈)-三軸(後屈)と軸を合成してもらった後で、さらに、立てている左足で床を軽く踏み込んでもらいます。
さて、動診です
さて、こんな骨盤矯正のあとの動診です。
はじめに、股関節の屈曲をしてみます。
左足をお腹の方へ曲げていきますと、最初の瞬間から、その動きが軽くなっていることが伝わってきます。
左の膝を外に倒していきます。これも明らかに可動域が改善されています。
Yさんも「アレッ」という表情をみせます。
そしてさらに、両足を床に伸ばしてもらいます。
「足を伸ばして骨盤・腰に違和感出る~?」
「いえ、ないです。大丈夫伸ばせます」とYさん。
たった一つの骨盤矯正・三軸操体法で決まってしまいました。
恐るべし骨盤矯正・三軸操体法!
さらに、ベットから降りてもらって立位での動診です。
後ろ反らしです。
「あ~、さっきより、全然いいです!」
ひとつの操法で決まってしまったはいいけれど、
「ハテ、これからどうしよう?」と、とまどってしまう私。
骨盤矯正・骨の操法
「ああ、私の師匠のひとり・上川名先生なら、ここで、堂々と治療を終わりにしてしまうんだろうな~」と思いつつ、、、。
「じゃ~、今度は横向きになってください。
骨盤を締めていきますから」とまだまだ技の多すぎる私。
決まってしまったものを壊したくはないので最小限の操法を選択しました。
骨盤矯正・骨の操法です。
右上の側臥位の場合は、私の左手は患者さんの骨盤・上後腸骨棘にふれます。
そして、右手は患者さんの骨盤・上前腸骨棘にふれます。
最初は右手も左手も五分五分の圧で加圧していきます。
そこからしばらく落ち着いたころを見計らって、上前腸骨棘の圧を多めにしたり、上後腸骨棘の圧を多めにしながら前後の圧を調節していきます。
Yさんの場合は上前腸骨棘を多めの方が「快」ということです。
「ああ、気持ちいい」と言ってくれます。
「快」のわかるYさんには「その気持ちいい感じは自然とおさまってきますから、もういいな~と思ったら教えてくださいね~」と伝え、ジワ~ッと押しつづけます。
「もう十分です」ということで、あまり長くはありませんでした。30秒ほどでしたでしょうか?
さあ、これで、今日の治療は「足ゆらし」でおしまいです。
骨盤の歪みは見てわかるのですか?
帰りしな、獣医師のYさんに、「骨盤の歪みは、見たり触れたりしてわかるものなんでしょうか?」と質問されます。
正直な私は「私レベルじゃ正直、骨盤の歪みなんてわかりませんよ。
そりゃ、1センチもズレていたらわかりますけどね。
けれども、患者さんにはそれがわかるんです。
ミリ単位、いえいえ、もっとわずかなズレも感覚でわかるんです。
ほら、さっきもわかったじゃないですか。
そういう患者さんの感覚をたよりに、患者さんに聞きながらやっていくのが、この操体法です」。
ウ~ンわれながら、なかなか優等生のお答えができました。