ぎっくり腰のメカニズムを学ぶ
30代の男性Tさんです。
ぎっくり腰のメカニズムを学ばせていただいた症例です。
製造業・工場で働いています。工場で働いているため、立ち仕事、立っての作業が多いということです。また、20キロ~30キロの部品を持ち上げることもよくあるといいます。
はじめてご来院した時は、いわゆる「ぎっくり腰」。急性腰痛ということでご来院いただきました。
手ごわいぎっくり腰
けれども、このぎっくり腰が、実は、手ごわいぎっくり腰だったわけです。おかげで、ぎっくり腰に対応する「後屈スーパー・マッケンジー操法」を思いつくことになりました。
はじめてご来院した時は、「ぎっくり腰」です。立位での動診では前屈も後屈もままならない状態です。
立位での動診で、前屈も後屈もできない状態の場合、
「ああ、このぎっくり腰は骨盤がゆるんだせいだな」と判断して治療します。
ぎっくり腰の場合、骨盤の関節、「仙腸関節」または「腰仙関節」いずれかがゆるみ、体幹を支えることができなくなり、前屈・後屈ができなくなると考えております。
ですから、ぎっくり腰で前・後屈が出来ない場合、「仙腸関節」・「腰仙関節」を締めるような操法を選んでいきます。
基本の操法である「つま先上げ」であったり、「膝倒し三軸」、「骨盤三軸」また「I-POSITION」を選ぶ場合があります。けれども、ぎっくり腰には、とどめは、「仙腸関節」への「骨」の操法です。
これらの操法で治療しますと、だいたいの「ぎっくり腰」は、それなりの成果がでるものです。
ぎっくり腰向けの整体のあと、Tさんに立位で動診をしてもらいます。
前かがみはできるようになりました
前屈です。「お~」と思わずTさんの口から喜びの声がもれます。
「いい感じですね。それじゃあ、後屈してみて」
後屈していきます。「痛て、ててて!」
上手くいきません。
もう一度、ぎっくり腰を狙った「仙腸関節」への「骨」の操法をくりかえします。
動診。後屈です。
「痛て、ててて、、、、」
後屈の可動域は少しは良くなっていますが、やはり上手くいきません。
しつこい私はもう一度、ぎっくり腰を狙った「仙腸関節」へ「骨」の操法をおこないます。
動診。後屈です。
後ろ反らしがうまくいきません
「痛て、ててて、、、、」。やはり上手くいきません。
今日の治療はここまでにしておきます。
「後ろに反らすと、まだ痛みがでますが、前かがみの動作は良くなってますので今日のところはここまでにしておきますね」。
出来はよくなかったのですが、Tさんのほうから「次はいつきたらいいですか?」と尋ねてくれます。ありがたいことです。
「この状態でしたら、早めにもう一度いらしたほうがいいと思いますよ」と伝えます。
「それではまた明日お願いします」となりました。
ところが、翌日も同じ結果に終わってしまいます。
このぎっくり腰に、なかなか成果がだせずにへこんでしまう私にたいして、「以前このようなぎっくり腰になった時は一か月以上かかりましたから」とTさんは案外平気です。
こんな、ぎっくり腰をめぐっての来院が5回もつづいた時です、
コ~ン先生の「胸椎の骨の操法」が思い浮かびました。
胸椎を締めていくだけで、肩・首にあれだけの成果をだすことができるのだから、腰椎に対して「圧」を加えてもいいじゃないか。
スーパー・マッケンジー操法を編み出す
うつ伏せになってもらい、両手を肩のわきにおいてもらい、肘を伸ばしながら体幹を反らしていってもらいます。
ぎっくり腰のTさんは、反らせないだろうなという勝手な私の予想を裏切って、この体幹反らしができるのです。マックス近くになると、さすがに「痛ててて」といいます。
「反らせるじゃないの。これはやるしかない」とつぶやいて、
マッケンジーのポーズ、体幹を反らしてもらいながら、
腰椎の5番と仙骨の関節部位、「腰仙関節」に両手の親指で「圧」を加えていきます。やるたびに、体幹を反らす可動域が確実に高まってきています。マックスでも痛みがでなくなってきました。
それでは、動診です。立位で後屈!
「お~、痛くねえ~」とTさんの喜びの声。
やっと一件落着です。
「仙腸関節」は仙腸関節。「腰仙関節」は腰仙関節。
それぞれやはり別物にちがいありません。
まずは、これで成果を出したTさんのぎっくり腰ですが、
ところが、まだ問題が隠されておりました。
一週間後に来ていただいたTさんですが、
「どうですか~」とききますと、
「2~3日するとまた腰が痛くなって」といいます。
そう!このぎっくり腰、また、戻ってしまうのです。
治療は後屈スーパ・マッケンジー操法でほぼ一発できまるのですが、
持続しない。
持続のさせ方、自宅でのケア、仕事場での作業のクセ、または家庭での日常生活でのクセ等々の洗い出しが必要なようです。