坐骨神経痛でご来院です

「一週間前にぎっくり腰みたいになって、それから痛みがお尻の方まででてきて、どうやら坐骨神経痛みたいなんですけど」とお電話で問い合わせをいただきました。

ご来院いただいて、お話を伺いますと、

一週間ほど前にぎっくり腰みたいになって、あまりに痛くてどうしようもなかったので、お住まいの近くに救急センターがあるので、そこに駆け込み、レントゲン検査を受け、鎮痛剤を処方されたということです。

「腰椎の5番と仙骨の間が狭くなっているといわれました」ということです。

救急センターでは3日分の鎮痛剤しか処方してもらえなかったので、以前にかかっていた整形外科を受診し、鎮痛剤を処方してもらって飲んでいるけれども痛みが引かないので、当院にきてみたということです。

痛みが出ているのは、右のお尻周辺と、右の骨盤の上のあたりが痛いということです。

「何をしても痛い」といいます。

問診をするために、椅子にすわってもらっていても「痛い」のだそうです。

何をしても、どんな姿勢をとっても痛みが引かないといいます。

「常に痛い」状態です。

検査をしていきます

動診、動いてもらいながら、体の異常を探っていきます。

ところがどうして、動きはけっして悪くはありません。

体幹を前屈しても、後屈しても動きはそんなに悪くありません。

可動域制限は出現しません。

けれども、常に痛いのだそうです。

動いて痛みが増すのか、というと、そういうこともなく、常に痛いということです。

上肢の動きも見ます。

定番となっている「結帯動作」をみますが、

痛みが出ている右側の結帯動作は問題ありません。

逆に左の結帯動作で可動域制限がでます。

上肢・下肢の動きから判断して、これはどうやら上肢・下肢、手と足のコリが原因の坐骨神経痛ではなさそうな気がします。

それなら、問題は比較的簡単に解決するのですが、、、。

骨盤矯正から始めます

手と足のコリが原因の坐骨神経痛ではなさそうな予感がしましたから、骨盤矯正から始めます。

これは、もう異例の整体の始め方です。

通常であれば、手と足から攻めてそれでもだめなら骨盤矯正にはいるのですが、まずは骨盤矯正からです。

軽く痛みが出ている右の骨盤を押していきます。

押されても痛みはでませんので、続けながら、反応を見ます。

「お尻を押されて、痛みが減る感じはありますか?」

「ちょっと楽になった感じがします」という答えです。

それでは、ということで、続けます。

けれども完全に消失するところまではいかないようです。

痛みのでない姿勢を探します

仰向けでも、横向きでも痛みは出ます。

仰向けで、膝倒しをしてもらいます。

痛みは常に出ているのですが、動きは良好です。

仰向けでも、横向きでも痛みが出続けているので、ダメ元でうつ伏せになってもらいます。

これもやはり痛みがでたままです。

さらにダメ元で、右足をカエル足にしていきます。

「痛みはどうですか?」と聞いてみます。

するとどうでしょう!

「痛みが軽減した」といいます。

さらにカエル足を深く曲げて、お腹につくほどに上げていきます。

するとどうでしょう!

「痛くない。痛みが消えた」といってもらえます。

カエル足ということは、

右の股関節の外旋、外転、屈曲。

さらには、体幹の前屈もかかります。

この動き、このポジション・姿勢で痛みが消失するということです。

このことについて考えていきます。

前置きが長かったですね。

痛みが消えるポジションとは何だろうか?

この方は、

右のカエル足、

右の股関節の外旋、外転、屈曲。

さらには、体幹の前屈。

この姿勢・ポジションで痛みが消えました。

足を元に戻して、伸ばすと、やはり痛みが出ます。

この痛みが消えた姿勢・ポジションというのが、この方にとって「正常」な姿勢になってしまっていると私は考えます。

右のカエル足、

右の股関節の外旋、外転、屈曲。

さらには、体幹の前屈。

この姿勢が日常生活において、この方にとっての正常な姿勢・ポジションだということです。

お仕事を伺いますと、事務職ということで、一日中パソコンに向かい合っているそうです。

そう、体を深く前かがみにしていくと、

このカエル足の姿勢が出来あがります。

うつ伏せでは、カエル足。

椅子に座っては、深い前かがみ、この姿勢です。

この姿勢が正常になってしまったために、足を伸ばした姿勢は逆に不自然な異常な姿勢となり痛みがでることになった、と私は考えます。

このギャップを埋めていくことが、整体の眼目となります。

操体法の楽な姿勢とは?

私が師事し、学んでいるている操体法では、痛みの出ない姿勢、楽な姿勢から整体を始めるのが、鉄則・ルールとなっています。

この痛みのでない姿勢・楽な姿勢というのが、実は「曲者」で、

実は、この痛みのでない姿勢・楽な姿勢というのは、「正しい」姿勢ではなく、歪んだ姿勢だ、ということです。

その人にとっての、「その時」の楽な姿勢、痛みの出ない姿勢ということであって、本来の生活をするために快適な姿勢ではないということです。

だから、操体法はこの楽な姿勢、歪んだ姿勢から整体を始めるわけです。

この歪んだ姿勢を続けるとどうなるのか?

では、この楽な姿勢を痛みが出ないからといって続けるとどうなるのでしょうか?

そう、歪み続けていきます。

腰であれば、それは、ますます曲がっていきます。

楽をし過ぎれば、そのツケは必ず、おのれの体に帰ってくるものです。

では、この方に楽だ、痛みが出ないからといって「カエル足」の姿勢をつづけてもらうと、どうなるでしょうか?

これが、不思議なことに、快方に向かっていきます。

これはどういうことが起きているのでしょうか?

そう、ベッドの抵抗がかかっているわけです。

足が触れているベッド、

手・肩が触れているベッドが抵抗、反発力となって、

逆方向、矯正方向のベクトルとなって働いてくれるわけです。

と、私は考えます。

「楽な姿勢からコリを探る

この方の「楽な姿勢」がわかったわけです。

うつ伏せでのカエル足です。

では、今度は姿勢を仰向けにかえて、さらに整体を進めます。

仰向けになってもらうと、もちろん、まだ、お尻から腰にかけて坐骨神経痛の痛みが出現するわけです。

けれども、痛みがでない姿勢・ポジションがわかっていますので、その姿勢を作ります。

仰向けで、股関節を外旋・外転し、屈曲します。

早い話が、右足をお腹の方に曲げていきます。

すると、やはり、当たり前ですが、痛みは出なくなります。

この痛みのでない姿勢を維持しながら、触診、圧痛点を探っていきます。

そう、「楽な姿勢」でさらに触れることのできるコリを探します。

すると、右足の太もも、内転筋のコリに触れます。

かなり痛がります。

さらに、肋骨です。

肋骨は内転筋よりさらに痛がります。

最大の圧痛点はどうやら、この肋骨のようです。

ここを震源地として腰~臀部まで坐骨神経痛の痛みを発生させているようです。

ここで不図、ひらめいたわけです。

真逆のことをしてみようと。

真逆の姿勢でも痛みは出ない

この方の坐骨神経痛の痛みの出現しないポジションは、

股関節を外旋・外転し、屈曲。

体幹の屈曲なわけです。

このポジションから、ストレッチ、矯正の方向に体勢を移します。

両膝を立て、両膝を左に倒します。

右股関節の内転・内旋です。

さらに、軽く右の踵でベッドを踏み込んでもらいます。

そう、体幹の伸展も入れます。

その姿勢をとってもらうと、

「イタタタタ」と声をあげるかと思いきや、

なんと、「痛くありません」という反応です。

すかさず、「この姿勢がこの坐骨神経痛の治るポジションです。

その姿勢をやってみてください」と伝えます。

ここまでの整体で、坐骨神経痛の痛みがでないポジションを二つ見つけることが出来ました。

ひとつは、歪んだ姿勢の楽な姿勢。

もうひとつは、歪んだ姿勢と真逆のそのストレッチの姿勢です。

「この二つの姿勢をとっていくとこの坐骨神経痛は治っていきますよ」と伝えました。