鎖骨の下に痛みが出る肩こり

鎖骨下がズキンと痛い

鎖骨の下が痛いということです。

鎖骨とちょうど乳房との間に痛みがでて、肩も上がらなくなったし、左肩を下にして横になることもできないといいます。

筋肉でいえば、大胸筋の痛みということです。

ちょっと珍しい症例です。

仕事の様子をイメージしてみます

この方のお仕事は、保育士さんです。

そのお仕事の様子をイメージしてみます。

いまの担当が1歳児ということで、左腕でだっこする姿が思い浮かびます。

聞けば、やはり、左腕でだっこして、右手でいろいろ作業をしているということです。

これは、きっと、左腕で1歳児をだっこしすぎたせいで、左の鎖骨下に痛みが出ているに違いありません。

1歳児をだっこしているために、左肩から鎖骨、肋骨までが下にさがったと思われます。

視診、見た限りでは、極端に左肩が下がっているようには見えませんが、、、。

首もやはり動きません

動診してみますと、鎖骨下に痛みは出ているのですが、

首がもうほとんど動きません。

左右にねじっても、左右に倒しても、可動域制限がでます。

こうなれば、もうアプローチする部位は決まってきます。

そう、首の可動域制限といったら、これは、もうお腹の整体から始めます。

やはり、左の側腹部にコリがあります。

左腕で1歳児を抱いているので、左の側腹部に負担がかかっていたのでしょう。

まずは、ここ、左の側腹部を整体します。

お腹を整体すると、大概の場合は、首の可動域が改善するものです。

ところが、思ったほど首の可動域が改善してきません。

肋骨を整体します

なるほど、されば、とて、側腹部から上、頭のほうへ整体の部位を変えていきます。

そう、肋骨です。

左の肋骨、側腹部から脇の下にかけてのポジションを整体します。

筋肉では、外腹斜筋から前鋸筋です。

ここが凝っていて、柔軟性がありません。

肋骨から剥がすにはあまりにコリが厚すぎます。

コリをもみほぐすように整体していきます。

かなり、痛がります。

それほどこの外腹斜筋と前鋸筋がこっています。

側腹部の外腹斜筋から脇の下の前鋸筋までを整体していきますと、

ようやく首が動き始めました。

左右のねじりも、左右の側屈も可能になりました。

そして、主訴であった、鎖骨下の痛みも、消失しました。

軸の回転で考えても、首の側屈で可動域制限が出る場合には、体幹の側面を整体するのは、セオリー通りの整体の方法と言えます。

鎖骨に付着する筋肉も肩こりに影響をおよぼします

参考までに、肩こりの原因となる、鎖骨に付着する筋肉について解説してみます。

肩こりといいますと、どうしても、首筋であったり、肩甲骨から背中にかけてのラインに視線が向いてしまいがちです。

けれども、この鎖骨に付着する筋肉も肩こりに大いに影響を与えています。

体幹の前面も後面もどちらも、かたこりに影響するということです。

鎖骨に付着する筋肉の位置の写真です。

この写真は、左の鎖骨を上から見た写真です。

①鎖骨の内側、(7)は、胸鎖乳突筋です。

②鎖骨の前面には、(6)、大胸筋です。

③前面の肩甲骨に接する外側、(3)が三角筋です。

④後面の肩甲骨に接する外側、(10)が僧帽筋です。

首の動きをみてみます

首の動きをみてみますと、

側屈・横に首を倒す動きには、このうち、胸鎖乳突筋と僧帽筋がかかわります。

回旋・首をねじる動きには、胸鎖乳突筋が関係します。

首の動きそのものには、このように、胸鎖乳突筋と僧帽筋がかかわるわけですが、

その動きにはかかわらなくても、鎖骨に付着する、大胸筋や三角筋が拘縮・硬くなったりしますと、

胸鎖乳突筋と僧帽筋の動きに制限をかけることは、容易に想像がつきます。

ですから、作動する筋肉ばかりではなく、それと関連する筋肉群をも視野に入れた整体が欠かせないことになります。

姿勢も問題を考えてみても、

ほとんどの人が仕事・作業する場合、猫背、前かがみでの仕事・作業を強いられます。

そうると、どうしても、この体幹の前面の筋肉群が拘縮してしまいます。

この前面の筋肉群、鎖骨下の筋肉群の整体は肩こり・首こりの場合かかせないアプローチとなるわけです。

鎖骨の下がふくらんでいます

またさらに、鎖骨下に痛みを訴える症例もあれば、鎖骨下のハリをうったえる症例もあります。

「左の鎖骨の下がはって苦しい」といいます。

痛みがあるわけではないのですが、はっている感じがする、ということです。

肩こりといいますと、首筋・肩回りの苦し訴える方が多いものですが、

鎖骨下の肩こりというのもあるわけです。

確認のため鎖骨下を触れてみますと、左右で明らかに違いがあります。

左の鎖骨下は固くはっています。

経穴でいえば、肺経の「中府」・「雲門」といえそうです。

筋肉でいえば、大胸筋また、その皮下にある小胸筋です。

鎖骨下は万能の経穴です

鎖骨下のコリの触診および整体はかかせないポイントです。

万能穴、すべてに効くツボといっても差し支えないほど、様々な効能を持っています。

例えば、

肩の上りが悪かったり、

首の動きが悪かったり、

さらには、股関節の屈曲が悪かったり、

股関節の動きにまで影響を及ぼします。

整体に困ったときには、「耳」と「鎖骨下」へのアプローチは欠かせません。

このように鎖骨下の重要性は理解していても、これほどまでに鎖骨下が固くハリをみせている方も珍しいものです。

ストレートに鎖骨下にハリがでています。

烏口突起周辺

肩甲骨の烏口突起という、鎖骨下にコリコリと触れることができるポイントがあります。

ここが、肺経の「中府」・「雲門」ということになるわけですが、

ここに付着する筋肉は、

烏口腕筋

上腕二頭筋の短頭

小胸筋です。

また、鎖骨下の内側二分の一の領域には、大胸筋が付着します。

どうやら、解剖学的に素直に、これらの筋肉に緊張・テンションがかかり、鎖骨下を引っ張り、ハリ・コリを作っているように思われます。

女性だけのフィットネスクラブに通っています

この方、健康のためにということで、職場の近くの女性だけのフィットネスクラブに通っていることがわかりました。

また、鎖骨下のコリは左なわけですが、実は、右手の腱鞘炎・ドケルバン病ということでご来院いただきました。

この方の腱鞘炎・ドケルバン病についての見解は、

「ドケルバン病と筋力トレーニング」

と題して、レポートさせていただきました。

この方の腱鞘炎・ドケルバン病は、どうやら、フィットネスクラブでの筋力トレーニングに、その原因があることが推察できました。

なるほどです。

同じことが、左にもおきていたと考えることができます。

フィットネスクラブでの筋力トレーニングの負荷が

右手では、右手の手首の付け根に痛みを発症し、

左手では、鎖骨下のハリとなって出現したと思われます。

では、なぜ、右手は手首にその症状がでて、左手は鎖骨下に出たのかと問われれば、残念ながら、答えに窮するしかありませんが、、、。

フィットネスクラブのトレーニング・メニュー

この方が通っているフィットネスクラブには、

上腕二頭筋らを鍛えるバーベルカールや

大胸筋を鍛えるダンベルフライの器械もあることが、教えて頂いたので、わかっています。

肘関節を曲げたり、肩関節を前から上げたりする動作で、

上腕二頭筋の短頭や烏口腕筋に負荷がかかります。

負荷がかかるということは、筋肉を鍛えるということです。

また、胸の前で、手を開いたり閉じたりするダンベルフライの動作では、大胸筋に負荷がかかり、鍛えることができます、

これらの動作をすることで、これらの筋肉が付着する烏口突起や鎖骨下がふくらんできてもおかしくはありません。

さっそく、腕・上腕を整体することにします。

予想通り、上腕に触れ、整体するとコリが感じられ、本人も痛みを感じます。

かなりコッテいます。

上腕二頭筋の長頭・短頭。

烏口腕筋。

上腕筋を整体します。

すると、やはり、あれだけ凝っていた鎖骨下がやわらかくなりました。

これは、本人でもわかるほどにやわらかくなりました。

さらに、首の可動域を確認しますと、左右の側屈の動きもスムースになったことが確認できます。

健康のために良かれとばかり行っていた筋力トレーニングですが、

やはり、「あう・あわない」の個人差があり、

万人にその効果をみつけることはできないようです。

鍛え過ぎは、負荷のかけすぎになり、逆に筋肉の「コリ・ハリ」そして、さらに痛みの原因にもなるということです。

尋ねてみます。

「女性の方が腕を鍛える必要はないんじゃないんですか?」と。

すると、

「二の腕に余計な肉がついてる方がいるじゃないですか。

そういった方がこの腕のトレーニングをすれば、二の腕がスリムになるということです」と教えてくれました。

なるほどです。

けれども、やはり鍛え過ぎは禁物だと思われます。